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【憂国の直言】「慰安婦問題」を巡る不当判決に日本政府は真正面から反論せよ 国際歴史論戦研究所 上席研究員 松木國俊
韓国の司法には国際法や国際的常識が通用しないようだ。去る11月23日、ソウル高等裁判所は韓国の元慰安婦や遺族計16人が、元慰安婦一人当たり2億ウォン(約2,300万円)の損害賠償を日本政府に求めた訴訟の控訴審判決で、日本政府の「主権免除」を認めず、日本政府に請求額を全額支払うよう命じた。
2021年1月にはソウル中央地方裁判所が、同様の訴訟を起こした他の原告に対し、同じ論理によって有罪判決を言い渡している。いずれの場合も日本政府は、国家の行為は他国の裁判権に服さないという国際法上の「主権免除」を理由に裁判自体を否定しており、「欠席裁判」のまま日本政府が有罪となったものである。
相次ぐ有罪判決に対して日本政府は「国際法違反であり強く抗議する」と表明しているが、韓国司法は全く取り合うそぶりを見せていない。日本政府が裁判に参加していない以上、
控訴も上告もあり得ず、判決は当然ながら確定する。それがどのような意味をもつのか日本政府には果たしてわかっているのだろうか。
ソウル地方裁判所による判決の主旨は下記の通りである。
- 日本政府は戦時中に計画的かつ組織的に朝鮮の女性を強制連行して性奴隷とした。
- これは国際規範に反する「反人道的犯罪行為」であり、「主権免除」の対象ではない。
- 元慰安婦の賠償請求権は日韓間で1965年に締結した「日韓請求権・経済協力協定」や2015年の慰安婦合意の適用対象に含まれない。
- 日本は反人道的行為を行ったことに対し未だに反省していない。
長年に亘る反日教育や反日市民団体の扇動によって「日本政府が朝鮮人女性を強制連行した」ということが韓国内で「常識」となっており、これを否定するものは「親日派=売国奴」の汚名を着せられて大バッシングを受ける。上記判決はそのような世論に押され、元慰安婦及びその支援団体の訴えを何の検証もせずに受け入れ、国際法を無視して下されたものであり、法倫理より感情をむき出しにした不当判決以外の何物でもない。
だが、これらの判決が確定するということは、日本政府が強制連行をしたという韓国内の「常識」に法的根拠を与えることになる。判決確定後原告側は韓国内にある日本政府の保有資産目録を開示させるよう裁判所に求めている。もちろん日本政府は応じないだろうが、韓国の人々の目には「韓国の裁判所から有罪判決を言い渡されながら、日本政府は反省もせずに逃げ回っている」としか映らない。日本への不信は益々深まるだろう。
「主権免除」のみを盾にして韓国の判決をやり過ごそうとするのは、いうなれば化膿した傷口を治療もせずに絆創膏を貼ってごまかそうとする態度と同じである。傷はやがて悪化して致命傷となる。このままでは「卑怯な日本」に対する韓国の人々の不満は心理的マグマとなって鬱積し、いずれ大噴出するかもしれない。
そればかりではない。かつて朴槿恵大統領が「千年経っても加害者と被害者の関係は変わらない」と「豪語」したように、韓国文化には過去を水に流すという観念がない。この判決は将来に亘って韓国人の胸に刺さった「トゲ」として残り、未来永劫韓国人はこの判決をもとに世界に向かって日本を貶め続けるに違いないのだ。
そもそも韓国の歴史観は日本のそれと全く違っている。日本では「ありのままの歴史」を追求するが、韓国では「考証や検証で歴史の真実を明らかにすることは不可能」という考えが根底にある。韓国の人々にとって大切なことは、自分たちにとって都合の良い「あるべき歴史」を作ってこれを押し通すことであり、「ありのままの歴史」ではない。
さらに韓国の対日歴史認識は「悪玉日本」「善玉韓国」という善悪二元論で成り立っている。慰安婦問題や徴用工問題、竹島問題を巡っても、韓国の主張する歴史こそが「あるべき正しい歴史」であり、不法な植民地支配をした「犯罪国日本」は「事実はこうだ」などつべこべ反論せずに問答無用でこれを受け入れるべきであると考えているのだ。
そのことは、1991年に韓国で開かれた「日韓歴史教育セミナー」で尹世哲ソウル大学教授が語った言葉からも良くわかる。彼は「教科書問題を解決するには歴史の科学性に傾斜しすぎてはならず、日本が事実にこだわる頑なな態度を捨てて教科書を書き直せば問題を解決できる」とあからさまに日本側に苦言を呈している。
これまでの日韓関係は安倍首相時代を除き、韓国が捏造・歪曲した歴史認識をそのまま受け入れて、謝罪を繰り返して来た。河野談話、村山談話、菅談話など挙げればきりがない。
だが、そのたびに「嘘」が「事実」となって日本人の誇りは大きく傷つき、韓国人の「日本への恨み」は倍加して来た。北朝鮮や中国にとってこれほど好都合なことはなかっただろう。
岸田首相に申し上げたい。もうこのような愚かなことはやめて欲しい。今回の日本政府有罪判決に対して、型通りの「抗議」で済ませ、後は「主権免除」で逃げるようなことをしてはならない。それが将来にどれほど大きな禍根をのこすかは既に述べた通りである。
安倍首相時代に内閣は「慰安婦強制連行の証拠は一切なかった」という主旨の文書を閣議決定している。ならば日本政府は何よりもまず「慰安婦を強制連行した」とする韓国裁判所の歴史認識は日本政府や日本国民の名誉を棄損するものであるとの声明を出し、その取り消しを求めるべきである。それに応じなければ「主権免除違反」と共に「日本国政府及び日本国民に対する名誉棄損」として国際司法裁判所に提訴することも辞さない構えを見せねばならない。
さらにこの機会に「不法な植民地支配」という韓国の間違った歴史認識に、国を挙げて正面から反論し、多少の痛みは伴っても韓国人の心に溜まっている「反日」の膿を、徹底的に絞り出す努力をしなければならない。日韓の間に真の互恵平等の関係を樹立するために、それは決して避けて通れない道である。
安倍元首相が語ったように、私たちの子や孫、その先の世代の子供たちに謝罪し続ける宿命を背負わせるわけにはいかない。その遺志を今こそ岸田首相、あなたに継いでもらいたいのだ。
以上