the-diet国会

【三芳雑記】倉本聰さんの率直な一言

その昔、脚本家の倉本聰さんに「テレビドラマが小説化して売れていることについてどう思われますか」と質問した。

倉本さんは「シナリオは、シナリオのまま読んでいただきたいですね。演じた役者を想像して読むと、わかりやすくて面白いものですよ」と答えられた。

そのときいただいた「前略おふくろ様」のシナリオを、主演の萩原健一や室田日出夫、大滝秀治、梅宮辰夫といった役者を想い浮かべて(いま挙げた人たちは、みんな故人となりましたが)読むと、場面の理解が進む。頭の中で再放送されるのです。

本来、すぐれたドラマは、もっと再放送されてしかるべきだ。現代に即したリメイク版も作られたってよいだろう。それに一作品数十円といった安価で、ネット配信を受けるサービスだってほしい(いや、私が利用していないだけで、既にそんなサービスが存在しているのかも?)。

拙宅の書棚には、理論社の「倉本聰コレクション」(全三十巻)や大和書房の「向田邦子TV作品集」(全十巻)が鎮座している。山田太一、早坂暁といった人のシナリオは持ち合わせていない。

倉本さんは「シナリオがもっと出版されて印税が入るようになると、脚本家は助かるのですが」と率直に語っておられた。

そうであろう。一部の大家を除いて、日本のシナリオ作家の脚本料は安いと聞く。

もし、それもあって向田邦子さんらが小説家に転じたとするなら、小説の傑作が読めるようになった当方は、それはそれでありがたいのだが……。シナリオと小説、またエッセイなどは、同じ書きものだとしても、全く違うジャンルである。どれもこれもこなせる人は珍しい。評論とコラムだって、正にそうなんですよ。    (融)