kokutai「日本への回帰」「揺るぎなき国体」
【日本への回帰】 心を表す数学教育 展転社代表取締役 荒岩宏奨
学生のころ、数学といふ学問が果たして社会に出てどのやうな意味があるのだろうかという疑問を持ちながら数学の授業を受けてゐた。将来、数学者や科学者といった道を選べるやうに、その可能性を残しておくためだらうといふ程度の認識しか持つことができなかった。数学の意義をまったく見出すことができてゐなかったのである。
ただ暗記するだけだと思ってゐた数学の公式には、自然の法則といふ美が表現されてゐるといふことを実感させてくれたのは「博士の愛した数式」といふ映画だった。この映画では、記憶が八十分しかもたない博士、そして家政婦とその息子とが数学を通しながら交流することにより、数学の公式には「自然」が隠されてゐるといふことが描かれてゐる。そして、数学には情緒や道徳、哲学が存在してゐることがわかる映画となってゐた。数学を学ぶといふことは、公式を暗記するだけではなく、道徳や美を学ぶことでもあることに気づかせてくれる、そのやうな映画である。映画には、学生の時には聞くのも嫌だった数学用語や公式が出てくるが、数学に雄大な自然の神秘を感じることができる。
数学者のアンリ・ポアンカレーは「数学の本体は調和の精神である」といふ言葉を残してゐる。調和には情緒、すなはち心が働いてゐる。世界的数学者である岡潔は「私の数学は、情緒を数学といふ形に表現したもの」と述べてゐたことを娘婿である鯨岡寧が記してゐる(岡潔著『情緒と創造』「はじめに」)。
藤原正彦の『国家の品格』がベストセラーになった時、岡潔の再来だと評価され、同時に岡潔も見直されるやうになった。映画「博士の愛した数式」の原作者は芥川賞選考委員でもある小川洋子で、原作『博士の愛した数式』の文庫本の解説では、この物語を執筆するにあたり藤原正彦の研究室を訪ねてゐたことが書かれてゐる。
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