shohyo「書評」
【特別投稿】サイパン島同胞臣節を全うす 三浦小太郎(評論家)
藤田嗣治の戦争画で、これはやはり傑作だと思います。もう見入ってしまいますね。「サイパン島同胞臣節を全うす」(1945年)終戦の数か月前に公開されました。
私はこれはもう戦争画というより宗教画だと思うんですよ。死を覚悟した人たちの様々な姿、最後の戦いに挑むもの、運命を受け入れて死を待つもの、様々な形で自決を図るもの、それぞれの人間の極限の姿が描きこまれています。
戦後、藤田の足元にも及ばぬ画家が、彼の戦争責任を声高に追求しました。藤田は1949年、フランスに旅立ち、二度と日本の地を踏むことはありませんでした。藤田は1945年8月末に、友人にあてた手紙でこう書いていたといいます。
「結局私たちは成すべきことをなして破れたので決して後悔はしません。やはりああ言ふ道を渡らなければならなかった運命に生まれたのだったと思います。」