tajikarao「タジカラオの独り言」
秘すれば花―LGBTQ考 野伏翔(映画監督)
コロナ前だから四、五年前のことになる。私の主宰する劇団夜想会にトオル(仮称)という紅顔の美少年が入ってきた。その後本人から「実は私は戸籍上は女なのです」と打ち明けられたのだが、ハキハキといつも元気で礼儀正しく、大道具などを運ぶ力仕事も率先して行う姿を健気に思い、さらに努力家なのでめきめきと演技の腕を上げたので、舞台版「めぐみへの誓い」で政治犯収容所の崔少年という役につけたことがあった。この芝居をご覧になった方はご記憶にあるだろう。レオナルドダビンチを尊敬していると言っただけで収容所にぶち込まれ警備兵たちに暴行を受ける、実話に基づく可哀そうな少年の役である。トオルは見事に演じた。だが他の芝居で彼(彼女?)を何かの役に配役することは中々難しかった。男を演じても髭の全く生えないつるんとした頬で大人の男の役はどうにも様にならないし声も高い。レッスンで女の役をやらせたら大いに照れながら演じていたが、やはり本物の女の子に比べるとどこか野太い。LGBTのT=トランスジェンダーとは心と体の性が異なる人。L=レズでもG=ゲイでもB=バイでも役者になるのに不便はないだろうし実際その数は結構多いと思うが、Tはなかなか難しい。宝塚に入って男役をやれれば良いのだろうが、トオルの場合は背が足りない。常に胸にはサラシを巻いていると言い、ホルモン注射で体調を崩すこともあった。結局、「声優なら負けない」と言って声優事務所の養成所に行ってしまったが、成功して欲しいものだ。
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