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空にはミサイル、田畑には糞尿弾、地中には核爆弾、そして海には津波弾 宮塚利雄(宮塚コリア研究所代表)
毎度尾籠なタイトルで申し訳ないが、今の北朝鮮の動きを知るにはこのキーワードを理解するしかないだろう。北朝鮮は2013年4月、最高人民会議で宇宙開発法が採択し、国家宇宙開発局が組織されてから今年で10年経った。この間、北朝鮮は人工衛星と称する長距離弾道ミサイルの多機能化、高性能化に狂奔してきた。そして国家宇宙開発局は今年4月までに偵察衛星1号機の準備を終了すると発表した。北朝鮮初の軍事衛星で「国家の戦争抑止力を向上させ、平和を守り抜く上で偵察衛星が持つ戦略的意義は大きい」と喧伝し、さらに2026年までの5カ年計画期間に多くの偵察衛星を大洋同期軌道に高く配置し、衛星による情報収集能力を強化することを想定しているとのこと。さらには北朝鮮の宇宙開発法は「主体性と自立性の原則を堅持することを定めている。他国の技術に頼ることなく、国内の人材と自立経済の土台に基づき、自強力によって事業を進めるということだ」と嘯いている。北朝鮮が他国の技術に頼ることがなく、ミサイル開発ができるのか、また、自立経済の土台に基づき事業を進めると言っているが、慢性的な経済難の貧困国が事業を進めることができるのは、外国の企業や銀行などからの仮想通貨のハッキング(窃盗)によってのみ可能である。
金正恩総書記は3月16日、大陸間弾道ミサイル(ISBМ)「火星砲―17」型の発射訓練を現地指導したが、訓練の参観後、「誰も逆戻りできない核戦争抑止力の強化で敵に恐怖を与え、戦争を抑止し、わが人民の平和的な生活と社会主義建設闘争を頼もしく保障しなければならない」と語った。朝鮮中央通信は北朝鮮軍が3月27日に模擬の核弾頭を装着した弾道ミサイル2発を「標的の上空500mで空中爆発させた」と報道。25~27日には津波を起こすと主張する「核無人水中攻撃艇」の水中攻撃試験を成功させたとしている。また、3月28日には小型の核弾頭とみられる写真を初めて配信したが、この核弾頭は比較的短い距離で範囲を限った攻撃を想定する「戦術核弾頭」の可能性があるとみられ、短距離弾道ミサイル「KN23」や「KN24」などに搭載できるとの見方もある。27日には金正恩総書記が「核の兵器化事業」を視察したが、小型の核弾頭とみられる物体が置かれ、背景に「火山31」と読める説明書きが見える。金正恩総書記は「我々の核が(韓国や米国)想像を超越する攻撃的な体制を完備した時に、初めて敵は我々を怖がるだろう」とし、「核武力を絶え間なく強化するだろう」と豪語した(「労働新聞」3月28日付)とのこと。もはや「弱者の恫喝」などと言っている場合ではない。北朝鮮が核を弄び、日米韓に核の挑発をし続けているのに、国際社会は手を拱いているのが現状だ。国連安全保障理事会では昨年5月、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ISBМ)発射実験を受けた追加制裁決議案が否決され、10月には日本上空を通過するISBМを発射したのに報道機関向けの声明すら出せなかったが、常任理事国の中国とロシアの反対があったからだ。もはや一刻の猶予も辞さない状況になってきたが、「現実的に北朝鮮の核武装を阻止できる唯一つの方法は、中国の対北朝鮮政策を変えることしかない。そのためにも、日本は核防衛体制をどうするかを決める必要がある。今のように米国の核の傘に甘んじる選択肢もある。…米国から核を借りるという方法もある。日本は核をタブー視する姿勢を改め、議論を避けずに、『核を持とう』とすれば、中国は本気で北朝鮮の核放棄に動くのではないか」(李相哲「産経新聞」2023年4月7日付)。長い引用になったが卓見である。