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今年もミサイルで始まった北朝鮮の新年  宮塚利雄(宮塚コリア研究所代表)

今の北朝鮮を理解するキーワードは金王朝一族の動向と、「核とミサイル」しかない。昨年は「ミサイルに始まりミサイルで終わった」。北朝鮮は12月31日午前、短距離弾道ミサイル3発を日本海に向けて発射した。防衛省の発表によると、2022年の北朝鮮によるミサイル発射は31日朝の3発で巡航ミサイルなどを含め37回、少なくとも73発となり、かいずれも過去最多となった。北朝鮮は2021年1月の党大会で、国防力発展の5カ年計画を決め、昨年は5カ年計画に基づき、全米を射程に収める新型大陸間弾道ミサイル(ICBМ)「火星17」や「極超音速ミサイル」と称する弾道ミサイルの試射を実施。計画に盛り込まれた固体燃料を使ったICBМ開発については、エンジンの燃焼実験を行った段階とされており、計画にはほかに「超大型核弾頭」の生産も含まれている。

 北朝鮮のメディアは1日、金正恩朝鮮労働党総書記が昨年12月26~31日開催の党中央委員会拡大総会で、韓国攻撃用の戦術核兵器の量産に向け、核弾頭の保有に料を大幅に増やす方針を中心にした2023年の核戦略を表明した。金正恩総書記は「『戦争準備』まで公言する南朝鮮傀儡が疑う余地なく我々の明白な敵として迫っている」と、拡大総会でこう危機感をあおり、核弾頭増産の必要性を主張した。金正恩総書記は人民の飢餓を尻目に、「核弾頭保有幾何学的に増やす」ことに集中する、いわば「圧倒的な軍事力の強化」の正当性を訴えたのであるが、金正恩総書記は総会の報告で「米国や敵対勢力が『人類史上類例のない圧殺政策』を実行している」と非難し、米国や敵対勢力に強硬な対決姿勢で臨む構えを示し、核戦略の強化を強調した。金正恩総書記はまた「抑止が失敗した場合には、核武力は第2の使命を決行することになるだろう。第2の使命は防御ではない」と述べ、核の先制攻撃も辞さない考えを改めて示したのである。もはや”弱者の恫喝”などではなく、ミサイル発射や核攻撃と言う“悪の飛び道具”による恫喝をいつでも実施する用意があるとの様相を呈してきた。

 北朝鮮は本年も1月1日、短距離弾道ミサイル1発を日本海に発射したが、元日の発射は異例の出来事である。問題は12月31日に発射したミサイルと元日発射した弾道ミサイルについて朝鮮中央通信は「超大型放射砲(多連装ロケット砲)の試射だったと伝えた。この「超大型放射砲」は軍需工業部門から党中央委員会総会への「贈答品」だったという。

 北朝鮮はミサイルや核開発の資金源をどのように捻出しているのか。よく北朝鮮を指して「北朝鮮は貧乏国」と称し、北朝鮮の一人当たりの国民総所得(GNI)は訳1059ドルで、3万3591㌦の韓国に比べて貧弱すぎるし、経済規模(国内総生産=GDP)は韓国の58分の1に過ぎない、と言われるが、北朝鮮経済は第二2経済(軍需経済)が人民経済に優先され、第二経済員会傘下の軍需工場及び企業所を通じて核・ミサイル開発をはじめとする軍事力増強を進めているので、我々が思う「貧乏国」とは違う。余談であるが、この第二経済委員会の存在を明らかにしたのは故玉城素先生であるが、玉城先生がこの第二経済委員会の正体を突き止めるまでは、「北朝鮮の国家予算に占める国防予算の割合が高すぎる」くらいの理解であった。最貧国と評価されている北朝鮮であるが、「これまで北朝鮮は慢性的な食糧難と厳しい生活難で早晩経済が崩壊するだろうと言われてきた。しかし、北朝鮮は国際社会の制裁と貧しい経済状況にもかかわらず崩壊の兆しが見えてこない。特に、金正恩時代に入ってからは多額の国防予算が必要なミサイルを連射しており、首都・平壌の中心部にはマンハッタンに劣らぬ“ピョンハッタン”と呼ばれる富裕層の住む高層ビル街が造られており、その資金源への疑問が高まっている」(「世界日報」 2022年12月28日号 「高永喆の半島安保」)の指摘にもあるように、北朝鮮の“悪の飛び道具”ミサイルや核開発資金源は「外国からの窃盗資金」である。