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なるほど納得政経塾-74- クラウゼヴィッツ『戦争論』を読み解く  小山和伸(神奈川大学経済学部教授 経済学博士)

古典的名著に明白な戦争の意味

 プロイセン軍人C. クラウゼヴィッツ(1780-1831)が、晩年ベルリン士官学校長時代に書いた『戦争論』は、戦争の意味と意義および戦勝への戦略と戦術が分析されている近代軍事科学の古典であるが、改めてこれを読み解けば、現在なお感慨を禁じ得ない論旨をいくつも見つけることができる。

 例えば、「戦争の当面の目的は、敵を屈服させ、それによって以後に起こされるやもしれぬ抵抗を不可能ならしめることである。」(清水多吉訳、現代思潮社1966)との見解に、GHQがいかに忠実にこれを実施してきたかを知ることができよう。

 また、「敵の抵抗力を打ち砕くという手段としての軍事行動が、敵に我々の意思を押し付けるという戦争の終極的目的・・・」との記述を沈思すれば、八紘一宇の理念に基づいて人種平等を唱え、第一次世界大戦後のパリ講和会議(1919)の国際連盟委員会において、「国際連盟規約」に人種差別撤廃を明記すべく、世界に先駆けて我が国が提案した「人種差別撤廃提案」を想起せずにはいられない。

 日・仏・伊などの賛成票11に対して、米・英などの反対票5でありながら、議長だったウィルソン米大統領の「全会一致でないため不成立」との宣言により、否決となった同提案の理念は、第二次世界大戦後に澎湃として興った有色人種国家の独立に、実現したと観ることができる。してみれば、日本は大東亜戦争の終極目的を達したという意味で、戦勝を制したのかもしれない。

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