shohyo「書評」
北朝鮮人権映画祭で上映予定の二つのドキュメント作品 三浦小太郎(評論家)
『168次北送船』1973年 『一目娘に会わせて下さい』1976年
この二つのドキュメント映像は、1970年代に制作された貴重な歴史的資料であり、この12月11日に開催される北朝鮮人権映画祭(会場は神戸ファッション美術館オルビスホール、入場無料)にて午前10時より上映予定の作品である。前者「168次帰国船」は、1973年に、新潟から北朝鮮に向かう第168次帰国船の現場を撮影したもので、その映像は1959年に始まった当時の北朝鮮帰還事業の熱狂は全く消え失せ、朝鮮総連の管理下、ただ黙々と北朝鮮に帰国者たちを輸送する有様が映し出されている。
そしてこの二作品、特に前者は、今批判的に報じられている旧統一教会関係の政治団体である国際勝共連合が制作に協力したものだ。しかし、この映画祭の実行委員会は、この二作品の歴史的重要性から、今回上映することを決定した。
北朝鮮帰還事業は、1967年の段階で一度停止している北朝鮮帰還事業は実質上1962年か63年段階から帰国者は減少の一途をたどる。もちろん、先に帰国した人たちが、検閲をかいくぐるように様々な手段で「総連の宣伝は嘘だ、北朝鮮には来るな」というメッセージを、日本に残った親族たちに伝えたからだ。日本政府は帰国者数の減少を見て、1967年8月の段階で帰国申請を締め切り、以後は通常の一般外国人の出国と同様の扱いにすることを閣議決定した。
この方針が貫かれていれば、少なくともまだ百人単位の朝鮮人が北朝鮮に渡らずに済んだはずだが、1970年、モスクワでの日朝赤十字会議で帰還事業の再開が決定する。1971年に第162次船が新潟を出港。1972年には、金日成生誕60周年を記念し「忠誠の手紙」などを伝達する朝鮮人の行進が東京、大阪などで行われ、総連系青年団体から選ばれた60名、朝鮮人大学学生約200名が、事実上「指名帰国」で北朝鮮に渡った。これがおそらく最後の組織的帰還事業であり、この1973年の第168次帰国船はその翌年の風景である。
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