tajikarao「タジカラオの独り言」

〈必殺仕事人〉 野伏翔(映画監督)

60の手習いで始めたトランペットが今や唯一の趣味となり、暇の折々に練習している。一年がかりだった「ゴッドファーザー愛のテーマ」も何とか吹けるようになり、今は「必殺仕事人」に挑戦している。「必殺仕事人」とは79年に大ヒットしたテレビ時代劇。普段は嫁と姑に頭の上がらない下っ端役人の、藤田まこと演じる中村主水が夜になると豹変し、法の力の届かない悪い奴らを仲間と共に暗殺していく痛快アクション時代劇シリーズで覚えている方も多いだろう。近年もキャストを変えてリバイバルしたらしいが、私は見ていない。

暗殺というと今はどうしても安倍元総理の暗殺が頭に浮かぶ。あれはとても許せるものではないが、このようなドラマの中に於ける「勧善懲悪」のテーマは、理不尽な悪を許さない社会風潮を守るためには必要なものだと思う。最近このような正義を守るために戦う主人公のドラマが極端に少なくなった。「大岡越前」「銭形平次」「水戸黄門」といった勧善懲悪の国民的時代劇や「太陽に吠えろ」「ハングマン」「Gメン」といったアクションものもなく、代わりに増えたのは韓流ドラマと、へたなお笑い芸人とおかまタレントと左翼論客の出るワイドショーばかり。日本のテレビは日本人を戦わない民族に育てようとしているようにさえ見える。悪を憎み正義を守る思想を単純と笑ってはいけない。これこそはあらゆる道徳、法律の根幹をなすものである。そして勧善懲悪ドラマの底を流れる弱い者への惻隠の情、武士道の庶民版ともいえる「弱気を助け強きをくじく」浪花節的信条が実は大切なものなのだ。一神教の世界においては悪魔的なものを憎み神の側に立って正義を為す意思であり、善を求めるこの価値観が無くなった時、世の中は現世利益のみを求める唯物主義の地獄と化す。

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