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【憂国の直言】化けの皮が剥がれた「お花畑の降伏論」 ―岸田首相は国民に「国を守る気概」を持たせよー 松木國俊
ウクライナ戦争勃発時にテレビのコメンテーターが「人命尊重のためにウクライナはロシアに即刻降伏すべし」という論陣を張っていた。だが9月7日付産経新聞「ロシアの深層」を読み、改めて敵に占領された国民の悲惨な運命に戦慄を覚えた。
ロシア軍は占領地に「フィルター・キャンプ」を設置して、ウクライナ住民を思想・信条や経歴に基づき選別しているという。米エール大学の調査グループが8月25日に公表した報告書によると、衛星写真によって既に21ヶ所の「フィルター・キャンプ」が特定されている。学校の校舎やテント村、拘置所や刑務所などが使われており、そこでは経歴や親族の連絡先、交友関係、ロシアの軍事行動に対する考えなどを書面に詳しく記入するよう要求される。さらに住民がウクライナ政府を支持する活動をしていないかなど徹底的にしらべられ、拷問も横行している。キャンプでの審査を通過したものには「証明書」が出され、これがないと占領地内で移動することもできないという。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチも9月1日の報告書で「数週間に及ぶ拷問で重傷を負った人や行方不明になった人々がいるとの証言を紹介した。エール大学の調査グループは「キャンプ」近くに遺体の埋葬場所を疑わせる掘削後が衛星写真で確認されたという。おそらく拷問で殺された人々が埋葬されているのだろう。
外国軍に占領されればこうなるのだ。冒頭のウクライナに降伏を勧めたコメンテーターは全く何もわかっていない。大東亜戦争終結後日本を占領したのがアメリカという民主主義国家だったからまだましだったが、もしソ連軍や中共軍に占領されていたら日本中で大殺戮が行われ日本列島は血の海となったに違いないのだ。
ではアメリカ相手なら早めに降伏すればよかったのか?冗談ではない。日本人が死に物狂いで戦ったからこそ、ポツタム宣言という「条件付き和平提案」を引き出した。早めに手を上げたら「無条件降伏」となり、アメリカも日本をなめ切って占領下でやりたい放題をやったに違いない。天皇陛下を頂く国体を維持できないばかりか、アジアの国々の独立もなく、世界の白人支配が永続化しただろう。日本人が大東亜戦争を戦い抜いた意義は間違いなくあったのだ。
「戦争は極力避けるべきだ」という気持ちはもちろん筆者も同じである。だが他国に占領されて生殺与奪の権利を握られ、奴隷同然の生活を強いられても命さえあればいいという考えには絶対に賛同できない。人間としての尊厳を奪われたまま「檻の中」で自由もなく、ただ命を長らえるだけの人生に何の意味があろうか。人類が目指す平和な世界とは「自由と人権を伴う平和」でなければならない。そのためにこそウクライナの人々は命を懸けて戦い、
世界がこれを支援しているのだ。
ロシアの西の隣国はウクライナだが東の隣国は日本である。次は日本が危ない。プーチンは2018年に「アイヌをロシアの先住民族に認定する」と発言し、プーチンに近い野党のセルゲイ・ミロノフ下院副議長は「北海道はロシアに領有権がある」と主張している。平成20年(2008年)に日本の国会が採択したアイヌ先住民決議がロシアに北海道・東北地方侵略の口実を与えてしまったのだ。
ロシアばかりではない。さらに大きな脅威が中国である。尖閣列島はおろか沖縄も虎視眈々と狙っており、日本に照準を定めた核ミサイルを配備している。
このような危機的状況にありながら、直近の世論調査でも「他国がせめて来たら戦う」
と答えた日本国民は10%程度であり、60%以上が「逃げる」と回答した。一体どこに逃げるのだろう。世界でもずば抜けた「腑抜け民族」と言わざるを得ない。
日教組によって自虐史観を植え付けられた日本人は、民族の矜持を失って「人命」至上主義に陥り、前述のコメンテーターが主張する「お花畑の降伏論」に酔って現実を完全に見失っている。ウクライナの惨状が示す通り「降伏」の先にあるのは専制と虐待であり、人間としての尊厳はおろか命すら奪われる恐ろしい世界なのだ。
敵がせめて来たらすぐに降伏するような国は世界中から見捨てられる。そんな国はアメリカも助けようがないだろう。国連で拒否権を持つロシアや中国は、誰にも邪魔されることなく容易に日本を占領できる。「お花畑の降伏論」は中国やロシアに日本侵略を促し、戦争を誘発する最も危険な思想なのだ。
日本の自由と平和を守るには、日本人自身が祖国防衛の断固たる決意を示す以外にない。
国防予算の増額と同時に、いかにして国民に「国を守る気概」を持たせるか、今こそ岸田首相は死ぬ気で考えるべきである。
以上