minsha 「とおる雑言」
【とおる雑言】 三正面からの攻撃でも対応を 寺井徹(母子福祉協会監事)
北海道の友人に電話をかけ「ウクライナ戦争が起きて何か変わった?」と問う。「何もさ、変わらないよ」が答え。「オイオイ、故郷はまだ平和ボケか」の気分である。
ベレンコ・ソ連空軍中尉の「ミグ25号亡命事件」(一九七六年)や栗栖弘臣統幕議長の「超法規発言」(一九七八年)の頃は、「もしソ連軍が北海道を侵攻したら」といった企画が、雑誌などで掲載されていた。稚内の道北、根室の道東のほか、いきなり石狩に上陸して、札幌に向かうかもしれないという「仮想」もあった、と記憶している。
事実、自衛隊も、その「仮想」を重視し、防衛力の主力を長らく北海道に置いてきた。ところが、近年の中国軍の膨張、そして北朝鮮の核開発である。尖閣をはじめとする南方にも、防衛力を展開していかなければならない。その矢先、この事態である。
一正面だけでなく、二正面でも、三正面でも対応して行かなければならないのだ。
イージスアショアは断念したけれど、代替措置はいかに図るか。隊員募集しても集まらない現状をどう改善するか。兵器の刷新や銃弾などの装備品を充実させるなど、課題は際限なくある。何よりも国防予算を大幅に増額させ、憲法を改正して、自衛隊を国軍として正しくに位置づける。
「北海道が核攻撃されたら」と問いかけたら、「まさかそんなことはないだろう」が友の答え。「みんな一緒に死ぬのならしかたがないよ。どうせ老い先が短いんだし」とも言う。「孫も一緒だぞ。それでもいいのか」と確かめると、「ウーン」と唸っていた。
(「とおる雑言」二〇二二年五月)