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核ミサイル開発に狂走金正恩政権  宮塚利雄(宮塚コリア研究所代表)

 ロシアのウクライナ侵攻が続く中、北朝鮮は2月27日と3月5日にミサイルを発射したが、この二発の弾道ミサイルは大陸間弾道ミサイル(ICBМ)級のものであった。防衛相が米韓両政府と連携して分析した結果、北朝鮮が発射した二発の弾道ミサイルは、いずれも最大射程5500㌔以上のICBМ級で、2020年10月に北朝鮮が行った軍事パレードで初めて確認され、昨年10月の兵器展示会に登場したものと同一だったと言われている。

 2月27日のミサイル発射について、朝鮮中央通信は28日に「北朝鮮の国家宇宙開発局と国防科学院が27日、偵察衛星開発のための工程計画に基づいた重要な試験を行った」と報じ、「実験では、偵察衛星に装着するカメラで地上の特定地域に対する垂直撮影や傾斜撮影を実施。高分解能撮影システムとデータ転送システム、市政制御装置の特性や動作の正確性を実証した。今回の試験は偵察衛星の開発で重要な意義を持つ」と伝え、同通信は27日の試験で上空から撮影したとする朝鮮半島の写真も配信したが、これは27日に発射した弾道ミサイルに装着したカメラで撮影したとみられている。

 さらに、3月5日には今年9回目となるミサイルを発射したが、朝鮮中層通信は6日に、「北朝鮮の国家宇宙開発局と国防科学院が、偵察衛星開発に関する重要実験を実施した」と伝え、「今回の実験を通じて、衛生データの送受信及び制御指令システムと様々な地上衛星管理システムの信頼性を実証した」と主張した。北朝鮮は4月15日に故金日成主席の生誕110周年記念日を控えており、それまでに偵察衛星打ち上げと称して実質的な長距離弾道ミサイルの発射実験をする可能性もある。

 金正恩政権が書くミサイル開発に狂走するのはなぜか。ロシアによるウクライナ侵略は、北朝鮮に核開発を正当化する理由付けとしてウクライナ危機を利用した。つまり、ウクライナは1991年のソ連邦崩壊に伴って独立した。当時、ウクライナは1800以上の核弾頭とICBМ(大陸間弾道ミサイル)があったが、1994年に米英露などと「ブタペスト覚書」を締結し、核兵器放棄の代償として、領土の安全性と独立的主権が保証されることになった。1996年6月に全ての核兵器がロシア側に返還・廃棄され、非核化を完了した。

 だが、28年経った現在、米英露が約束したウクライナの安全保障は全く機能していない。今回のロシアによるウクライナ侵略で「ブタペスト宣言」が反故にされた。この事態に金正恩は「大国は必ず約束を反故にする。やはり核を手放してはならない」と、ウクライナの核放棄の前例を教訓にして、絶対に核を放棄しないだろう。ウクライナは1991年のソ連崩壊により独立した後、世界3位の核保有国であった。

 金正恩は4月15日の故金日成生誕110周年記念日に、地震の労働党トップ10周年を記念して「米国をはじめとする国際社会の反発を跳ね返して、わが朝鮮はこれまでにない国防力を発展させた!」と自画自賛するであろう。ところで2月24日に、中国の薛剣・大阪総領事がツイッター上で、ロシアに侵略されたウクライナの教訓に関し、「弱者が強者に喧嘩を売るのは愚行だ」と日本語で書き込んで問題となったが、この言葉は金正恩が一番身に染みていることだ。朝鮮中央通信は3月11日に金正恩が、同国北西部東倉里にあり、過去に事実上の長距離弾道ミサイルを発射した「西海衛生発射場」を現地指導し、大型ロケットを発射できるよう施設を拡充するよう指示した、と報じた。トランプ大統領が金正恩を「リトル・ロケットマン」と揶揄したが、金正恩は「軍事偵察衛星をはじめとした多目的衛星を運搬できるよう、ロケットの組み立てや実験の施設を拡大し、燃料注入施設などの増設を求め、エンジンの燃焼実験場の能力を高め、発射の観覧施設を設けることも併せて指示した」と言うから、もはや「弱者の恫喝」とばかり判断することは危険である。いずれにせよ、

金正恩政権の核ミサイル開発狂走は人民のためではなく、自らの体制を護持するだけのものである。