nihonni「日本に誇りが持てる教科書を子供たちに」

12歳の少年は成長したか 新しい歴史教科書をつくる会 埼玉県支部長 篠原 壽一

トルーマン大統領によってGHQ最高司令官を解任されたマッカーサーは、帰国後、米国の軍事外交共同委員会で証言し、「・・・我々欧米人が分別盛りの40歳代の中年とすれば、日本人は12歳の少年である。・・・」と陳述した。

このことについて最近、この発言は日本人を馬鹿にした発言ではなく、日本人の純粋さを褒めた発言だという人もいるようだが、やはり日本人のある意味での幼稚さ、国際認識の甘さ、島国ゆえの多様な民族への理解不足、精神主義、自己満足などを指した、マッカーサーの正直な、文字通りの感想と私は思っている。

思うに、二百数十年の鎖国という長い眠りから覚め、ペリー来航以来十数年の混乱を経て明治維新を成し遂げた明治の人々は実に偉大だ。日本とタイを除くすべてのアジアの国々が欧米列強の植民地であった時代に、一歩間違えれば我が国も彼らの餌食になるところだった。それを巧みに乗り越え、優れた科学技術を取り入れて富国強兵を国是とし、一部に反乱士族の抵抗もあったがこれを抑え、人材を取り立てて政府基盤を整えるなどして奇跡的ともいえる大改革を成し遂げたことは、12歳の少年にできることではない。

その後、紆余曲折を経て大東亜戦争に至るが、戦場での将兵達は劣悪な環境の中で死力を尽くして戦い、アメリカ兵の心胆を寒からしめたが物量に勝るアメリカ軍には惨敗せざるを得なかった。

物量の他にアメリカは、作戦においても、戦後ビジネス界で広く使われるようになるOR(Operations Research)法やPERT/CPM法など数学的・科学的な戦術手法を開発し、発展させて、合理的・統合的に作戦を進めたのに対して日本は、全員玉砕覚悟の竹槍精神で対応した。

このような視点から見ると、アメリカが世界を俯瞰し、合理的に作戦を進めたのに比べて、我が国の戦いぶりは大人に対する子供の戦いとの観も禁じ得ない。

ところで、現代の日本人はどうだろう。戦後、占領軍は東京裁判によって日本は侵略国家だと決めつけ、日本国憲法を押し付け、有能な日本人およそ20万人を公職から追放し、後釜には共産主義者や時の権力に迎合する敗戦利得者といわれる人々を据えた。

戦後の世界は冷戦時代を経てソ連が崩壊し、中国が台頭する一方でアメリカの衰退が見られるなど激変の時代を迎えているが、かなりの日本人は冷戦時代のアメリカ頼りの、ぬるま湯につかったままのようにも見える。

押し付けられた憲法を75年間一字一句変えることなく守り続けてきて、これは平和憲法だから変えてはいけないと主張する人々がいる一方で、この憲法を押し付けたアメリカが悪い、今こそ破棄すべきだと主張する人々もいる。

また、戦後GHQが推し進めたWGIP(War Guilt Information Program)で日本人は洗脳されてしまった、これを使ったアメリカが悪いと言って、憲法を変えられないのは日本人を洗脳したアメリカが悪いと、アメリカを非難する人々もいる。

しかし、考えても見て欲しい。日本は、昭和27年4月28日にサンフランシスコ講和条約が発効して占領から解放され、主権を取り戻したのだ。憲法を変えるのも国軍を保有するのも、自分の国は自分で守るのも、日本国民が自分自身で決めることが出来るのだ。それをこれまで放置してというべきか、墨守してというべきか、この憲法に忠実に従ってきたのは他ならぬ日本人そのものなのである。

そのことを恬として恥じず、何でもアメリカのせいだと責任転嫁して己の責任に思いが至らないのは、まだまだ日本人は少年の域から脱していないと思わざるを得ないのである。