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北京五輪 大野敏明(ジャーナリスト)
政府の中途半端な、というか、腰砕けの、というか、煮え切らない、軟弱な対応は何だい?
北京で開催される冬季五輪の政府関係者派遣の話ですよ。アメリカが北京五輪に対して、政府代表団を派遣しない「外交ボイコット」を早々に決めると、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドも同調した。ところが日本政府は、決定を先送り。それを非難されると、「タイミングの問題」などと逃げたね。だけどタイミングって何だい?
北京に首都を置くシナ政府は、同国を構成する56民族のうち漢民族以外の55民族に迫害を加えてきましたね。しかし、それが山岳地帯や辺境に居住し、かつ少数であれば、北京語と共産党礼賛の強要程度で済んでいたのに、数的にも多く、宗教的にも濃厚な民族となると、徹底的な弾圧で臨んできた。
といって少数民族が弾圧されなかったわけではないよ。平地に住む少数民族は同化の対象にされて、いまや言語的にも文化的にも滅亡に瀕している。例えば、黒竜江省のオロチョン族、ホジュン族、甘粛省のボウナン族、ユグル族などは民族としてのアイデンティティーを失いつつある。共産党は「少数民族を大事にしていますよ」とアピールするために民族衣装を着せて全人代に参加させているけど、文化も言語も失われているといわれる。
まして数的に多く、宗教性の強い民族への弾圧はすさまじい。
チベットはチベット自治区を中心に約680万人が暮らしているといわれるが、共産党はチベット仏教を否定、多くのチベット僧が焼身自殺を遂げて抗議したにも関わらず、弾圧をやめず、1959年に発生した独立宣言をふくむ大規模な抗議行動には軍隊を派遣してチベット殲滅作戦を展開した。この結果、ダライ・ラマ14世は亡命を余儀なくされ、チベットは共産党の圧政下におかれたままだ。そして漢族がどんどん自治区に入り込んできて、自治区の主導権を握っている。なんのことはない、自治区とは名ばかり、漢族が支配しているんですね。
そして、今回問題になっているのが新疆ウイグル自治区です。
現在、中華人民共和国と称している地区に居住しているウイグル族は約1000万人、ウイグル族以外もふくめると、モスリムは2000万人を超えるという。しかも新疆ウイグル自治区は約960万平方メートル、日本の4.5倍の広さです。
これが共産党にとって脅威なんだそうだ。しかし、歴史をよく見てみると、共産党のウイグル弾圧は1990年ごろまではあまり表面化しなかったね。むしろ新疆ウイグル自治区の隣の南モンゴルでの弾圧の方がすさまじかった。これはおそらく、当時のソ連と同一歩調をとっていたモンゴル人民共和国(北モンゴル)と同じ民族である南モンゴルの人々がシナ共産党に反旗を翻すことを恐れていたからだろうね。
ところがソ連が崩壊して、中東の紛争が激化し、アフガニスタンやイラン、イラク、シリアなどで過激なモスリムが登場すると、一転、ウイグル弾圧に力を入れ始めたというわけですな。ウイグル人が過激イスラムと手を組まれたら困ると考えたのでしょう。
海外に家族や知り合いがいる者はまず隔離。次いで子供たちには洗脳教育。「中国共産党があるから私たちは幸せ」とかなんとかいう言葉を叫ばせ、言語も北京語以外を教えない。もちろん礼拝やラマダンなどのイスラム行事は禁止。ひげも剃れ、ベールも被るな、ブタを食え、という徹底ぶりです。抵抗する大人は男女を問わず、収容所に収容。共産党に従わない者には拷問と処刑が待っている。女性はレイプや避妊手術。
どうですか。凄まじいでしょう。いま収容所に入れられている人は100万人を超えるといいます。
では、共産党が恐れたイスラム諸国はどうした? こうした同じモスリムのウイグル弾圧に声をあげたか? 答えはノーです。なぜなら、シナ政府は一帯一路とか称して、パキスタンにもアフガニスタンのタリバンにも、イラン、イラク、シリアにも金をばらまいているからです。具体的にはそれらの国に投資をし、産品を大規模に輸入し、関税を引き下げて経済的に手なずけているからです。だから同朋のモスリムが弾圧されているのを知りながら、声を上げるどころか、むしろ、シナ政府の擁護に回っている。
まさに共産主義の面目躍如です。自分の言うことを聞かなければ、罪なき人でも処刑する、というのがレーニン以来の共産主義の本質です。なのに、岸田政権は「タイミング」だってさ。ようやく北京に派遣する人選を発表したけど、「外交ボイコット」という言葉は使わず、東京オリ・パラ大会の橋本聖子組織委員長、JOCの山下泰裕会長が出席するんだと。橋本委員長は国会議員だから、半分は公人だ。「こんなところもシナに配慮してますよ」という臭いがプンプン。人権弾圧への抗議声明もしない、非難決議もしない、こんな情けない政府はもうたくさんだ。