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毎度お世話がせの“リトルロケットマン“金正恩 ―ミサイル・核でしか存在感を示せない指導者― 宮塚利益雄(宮塚コリア研究所代表)
北朝鮮の朝鮮通信は1月6日、同国の国防科学院が5日に極超音速ミサイルの発射実験を行ったと報じた。発射直後に分離した滑空弾道部が700㌔先の標的に「誤差なく命中した」とのこと。この発射実験について韓国軍は北朝鮮が5日朝に内陸部の慈江道から日本海に弾道ミサイルと推定される飛翔体1発を発射したと発表していた。
北朝鮮によるミサイル発射は昨年9月の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBМ)の発射以来で、年明け早々の発射は国際社会に存在感を示し、国内に向けた国威発揚の材料として新型兵器による武力示威を示したものであるが、今回の発射は予定されていたものである。それは1月1日の朝鮮中央通信が、12月27日に開幕した北朝鮮の朝鮮労働党中央委員会総会において、金正恩総書記は会期中に示した「2022年の党と国家の活動方針」で、「不安定化する朝鮮半島の軍事的環境と国際情勢の流れは国家の防衛力強化を少しも遅らせることなく、さらに注力して推進することを要求している」と述べ、軍事力強化を継続する考えを訴えていた。さらに、金正恩総書記は昨年、新型のミサイル発射を繰り返すなどした兵器開発について、21年の「成果で極めて重要な地位を占める」と評価し、新兵器の開発を継続させる方針を明確にしていた。
さて、1月5日に発射されたミサイルであるが、朝鮮中央通信は、滑空弾頭部が分離後、目標方角に向かって120㌔を「側面機動した」(横方向に変則飛行をしたことを意味する)とのこと。この報道通りなら速度に加え、飛距離や制御性能も昨年9月の発射実験よりも格段に向上していることを示したものになるが、はたしてそうなのか。韓国国防省関係者は7日、北朝鮮メディアが極超音速ミサイルの発射に成功したと伝えていることについて、「飛行距離などの性能を誇張している可能性があり、極超音速の技術に到達していないとの見方を示した。弾頭の形状などから一般的な弾道ミサイルだと主張している」(『産経新聞』2022年1月8日号)。韓国軍は北朝鮮の発表とは異なり、早くから短距離ミサイルの発射と認めていたようだ。この5日に韓国の文在寅大統領は、北朝鮮への連結を想定した北東部の鉄道線路の着工式に出席し、南北対話の重要性を改めて強調したというが、北朝鮮によるミサイル発射実験の最大の被害者は韓国であるが、この大統領は抗議どころか「対話」を強調している有様だ。一方、日本はどうなのか。同じように日本政府は、国連安保理事会決議に違反したとして、中国・北京の大使館ルートを通じて北朝鮮に厳重抗議をしたと言うが、岸田文雄首相は「昨年来、北朝鮮が連続してミサイルを発射していることは誠に遺憾だ」と記者団に語り、岸信夫防衛相も同日記者団に「北朝鮮の目的がミサイル発射技術の向上にあることは明らかだ」と指摘したうえで、「いわゆる敵地攻撃能力の保有を含め、あらゆる選択肢を検討し、防衛力の抜本的な強化を取り組んでいく」と改めて決意を述べたという。今回のミサイル発射には与野党も反応し、自民党の茂木敏勝充幹事長は会見で「(弾道)ミサイルであれば国連安全保障理事会決議に違反して地域の平和と安全を脅かす暴挙であり、断じて許容されるものではない」と批判したが、このような日本の抗議は北朝鮮にとっては霞が関用語の「善処します」と同じにしか見られていない。岸田首相は今回の発射を受け防衛省・自衛隊などに、不測の事態に備え万全の体制を整えるように指示したと言うが、先ずは北朝鮮による対日攻撃を抑止するためには、敵地攻撃能力の保有が欠かせないことを国民に知らすべきである。日本人は忘れてしまったようだが、2009年に日本の東北地方上空を通過する北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射実験を忘れてしまったようだが、北朝鮮はこれからも何度でも日本海に向けてミサイル発射実験を行って来る。北朝鮮からの脅威を肝に銘ずべきである。