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【論説】日本を奈落に突き落とすEVシフトの衝撃
※イメージ画像
NHKスペシャル「EVシフトの衝撃」を見た。かなりの衝撃である。
ここ1年ほどですっかり時代を読み解くキーワードになった感のあるSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)。CO2を始め排気ガスを出さない次世代自動車として、世界標準はすっかり電気自動車(EV)にシフトしたと言っていい。
四半世紀前、トヨタが世界に先駆けて開発したハイブリッド車(HV)の「プリウス」は、販売開始当初こそコストパフォーマンスの悪さが禍いして不振だったが、行政機関や企業のイメージアップなどに利用される形で徐々に人気に火が付く。外部電源からも電気を供給できるPHV(プラグインハイブリッド)も投入し、量産体制に入ったことで新型が投入されるたびにコスパも改善され、ハイブリッドシステムは同社の代名詞になるほど成功を収めてきた。
トヨタは次世代の標準システムとして燃料電池自動車(FCV、Fuel Cell Vehicle)に狙いを定め、開発を続けてきた。水素を酸素と反応させて電力を発生させる仕組みで、水だけを排出しCO2のゼロエミッション(排出ゼロ)に適う技術だ。トヨタの旗振りで2020年には全国160箇所の水素ステーションを設置し、FCVの普及に努めている。
一方、EUや中国はこの四半世紀、EVの研究開発に集中投下し、世界の趨勢はすでにEVで決していると言っていい。EUや中国の街中には電気スタンドが次々と設置され、国を挙げた電気自動車普及のインフラ整備が進んでいる。とくに、EVシフトに前のめりなのがフランスである。ルノーの大株主でもあるフランス政府は2040年までにガソリン車やディーゼル車の販売禁止を決定し、英国もフランスに追随し同様の方針を示している。
番組ではほとんど触れていなかったが、EU・中国がEVシフトした理由の1つに、技術的に一歩先んじていたトヨタを始めとする日本のHVやPHV、FCVをガラパゴス化する狙いがあった。とくに原発大国であるフランスは、EVの動力源となる電気を原発で賄えるので、自国から新たなCO2をほとんど排出しないで済む。一方、FCVだと水素生産に天然ガスが必要となり、環境面でも資源面でも自国の優位性がなくなる。結果、SDGsが喧伝されればされるほど、原発インフラが充実した自国の排出ゼロ環境立国がアピールでき、次世代型の社会インフラや原発技術を世界に売り込むことができるというわけだ。
では、日本もこれに追随し、急ぎEVシフトにできるかと言えば、話はそう簡単ではない。HVやPHV、FCVはガソリン車のエンジン技術を応用できるので、3万とも言われる部品の製造に関わる関連会社や下請け企業も護送船団方式で受注体制を維持できる。ところが、全く新しいシステムのEVは、バッテリー技術に特化されてガソリン車ほどの部品が必要なく、多くの子会社が倒産の危機に晒される。米国でもGMやフォードなどが同じ課題を抱える一方、現在EVの世界シェア首位を独走する電気自動車メーカー・テスラモーターが成長することで、がっちりと技術力で世界トップを走る。
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