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「現実化する三島由紀夫の警告、高市早苗あっぱれなり」 西村眞悟
現在、衆議院の総選挙が行われているが、本当に重要な我が国の運命を分けた選挙は、直前にあった自民党の総裁選挙であり、その主役は高市早苗であった。このことを自覚する為に、三島由紀夫が、昭和四十五年十一月二十五日に自決する四ヶ月前に書いた、次の警告を読み返して欲しい。
「このまま行ったら、『日本』はなくなってしまうのではないかという感を日ましに深くする。
日本はなくなって、その代わりに、
無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、裕福な、抜け目がない、
ある経済大国が、極東の一角に残るであろう。」
この三島由紀夫の指摘から五十年を閲した現在において、ただ一点を除いて彼の、日本は「日本」でなくなるという警告は、まさに現実化しつつある。その除くべき一点とは、「ある経済大国が、極東の一角に残るであろう」という箇所だ。ここを「ある中共の自治区が、極東の一角に誕生するであろう」と変更しなければならない。即ち、このままいけば、「ある経済大国」どころか、国すら残らず、日本はあのおぞましい中共の「ある自治区」になる。三島由紀夫がもし生きておれば、気が狂うであろう。
しかし、高市早苗は、「このまま行ったら『日本』はなくなってしまう」という状況の中で、唯一人、果敢に「日本」を掲げて総裁選挙に打って出て、予想に反して多くの支持を集めた。そして、決戦投票で岸田は、この高市の力で当選した。従って、岸田は、本来、からっぽでニュートラルであっても、高市が実証して見せた「日本を取り戻す」という日本国民の思いを無視することはできない。従って、岸田は、高市のお陰で、前総理と前々総理よりも「日本回帰」という国民の願いを肌で感じて仕事をすることになる。
安倍総理は、憲政史上最も長い政権を維持した。そして、菅総理は一貫してその安倍長期政権の官房長官であったから、安倍・菅内閣は一体の長期政権だった。従って、現在の閉塞状況を理解するためにも、この長期政権とは一体何だったのか?これを知らねばならない。
祖父と大叔父がともに総理大臣で父が外務大臣の恵まれた長州閥の安倍晋三総理は、自ら保守を自認し、「戦後体制からの脱却」及び「日本を取り戻す」と国民に訴えて政権に復帰した。そして、政権に復帰して初めて迎える平成二十五年のサンフランシスコ講和条約が発効した四月二十八日に、憲政記念館に天皇皇后両陛下の御臨席を戴き「主権回復を祝う会」を開催した。しかし、その志を裏切るが如く、総理大臣として靖國神社に参拝することなく日本憲政史上最長の内閣という記録のみ残したのである。村山とか鳩山とか菅(カン)とかの、間違って総理になった馬鹿連中が、参拝しなかったのではないのだ。
アメリカの大統領が、アメリカの為に貢献した先人を偲ぶ、アメリカにおいて「至高の聖地」とされる国立アーリントン墓地に、特定の外国が非難するという理由で参拝せずに大統領を八年勤めたら、アメリカはどうなる?「アメリカの理想と自由」という理念で統合されている移民の国アメリカは共通の理念を失って、国民はバラバラになり瓦解の危機に陥るではないか。
しかし、我が国では、まさにそれが起こった。即ち、「我が国総理大臣は特定の外国が非難するので靖國神社に参拝できない」という事実を、まさに安倍総理とその官房長官であった菅総理は、長期政権であるが故に「定着させた」のだ。このこと愕然とせず、打ち過ぎて良いのか。本当の危機とは、日本が「日本」でなくなってゆくことである。安倍長期政権は、年々、この危機を積み上げてきた。足尾鉱山の鉱毒から谷中村を救おうとした明治の田中正造が叫んだ、「亡国を知らざれば、これ即ち亡国」という憂国の警告は、まさに現在の日本に突きつけられていると実感じねばならない。
しかし、安倍政権の最大の功績も知らねばならない。それは、平成二十四年に、政権に復帰する際に、「日本を取り戻す」そして「戦後体制からの脱却」という目標を掲げたことである。その上で、平成二十五年四月二十八日に、前記の通り安倍内閣主催で「主権回復を祝う会」を開催したことだ。
公式に主権回復を祝うということは、その前の我が国が連合国に降伏した昭和二十年九月二日から昭和二十七年四月二十八日のサンフランシスコ講和条約発効までの間、我が国に主権が無かったことを公的に確認したことである。よって、安倍総理が掲げたスローガンである「日本を取り戻す」とは何かが具体的に掌中にあるが如く明らかになったのだ。
それは即ち、日本を取り戻すとは、我が国に主権が無い時に、我が国を占領統治している連合国から、押しつけられたものを廃棄し、奪われたものを回復することである。
では、押しつけられたものとは何か。それは「日本国憲法」でありWGIP(日本は悪い戦争をした悪い国であるという洗脳即ち自虐史観)である。そして、奪われたものとは大日本帝国憲法と旧皇室典範と華族制度と家族制度そして帝国陸海軍ではないか。まさに素晴らしい内閣が誕生したのだ。私は、その日、安倍内閣主催の「主権回復を祝う会」を終えて憲政記念館を出てから、井尻千男さんや小堀桂一郎さんが主催している民間の「主権回復を祝う会」に出席して、まさにワクワクして、このこと、日本国憲法無効廃棄そして帝国陸海軍の回復を訴えた。
しかし、安倍総理は、それから二度と「主権回復を祝う会」を開催せず、靖國神社に参拝せず、自ら無効を証明した「日本国憲法」の九条に三項を加えてそこに自衛隊を明記するという改正を言い出した。無効なものは改正できないのに何を言うかと頭の程度を疑った。
そもそも、九条の二項で「陸海空軍はこれを保持しない」と「国の交戦権はこれを認めない」と明記された次ぎに三項を設けて「自衛隊」を書き入れればどうなる。自衛隊は演習もできなくなるではないか。演習とは軍隊が交戦権を行使するための訓練だからである。これでは、初め脱兎の如く、後は匹夫の如しではないか。そして、安倍内閣は、馬齢を重ねるが如く憲政史上最長期の政権となり、国民は倦んだ。気が付けば日本は、三島由紀夫の警告通りの痛恨の亡国の淵にある。
従って、この度の菅総理大臣の辞任は、無私の境地に出でたものであり、安倍長期内閣の惰性を絶ち、高市早苗の登場を促して、国民に日本を取り戻す気概を与え、恵まれた長州閥の最後を促すものとなった。これが、菅総理最大の功績であると思う。