the-diet国会

日教組(一) 大野敏明(ジャーナリスト)

 日本教職員組合という小中高の教員でつくる組織がありますな。時代遅れの、何のために存在しているのか、さっぱり分からない団体であります。最盛期は8、9割の組織率を誇っていましたが、現在は2割強に低迷、新卒者の新規加入も2割を割り込んでいます。かつて日教組から分派した共産党系の全日本教職員組合(全教)の組織率は3%強です。両組合とも、大方の教員の支持を得られていないってことだね。

 しかし、これらの者どもがかつて猛威を振るった時代があった。私が小、中、高校生の時代です。

 今回は日教組の非人道的、非民主的、非常識的、そして自分たちのイデオロギーのためには教え子の人権を踏みにじってもテンとして恥じない過去(多分現在も)について、私の経験をお話ししましょう。

 昭和36年、私は小学校4年生でした。60年安保騒動の翌年です。

 三鷹市立第三小学校4年2組、児童数54人、担任は高橋昭子という昭和2年か3年生まれの女性教師。

 高橋先生はひいきが大好きでした。顔立ちのいい子、成績のいい子、歌のうまい子が大好きでした。

 みなさんは信じないかもしれませんが、当時の私はとても可愛く、勉強もでき、歌も上手だったのです。当然、先生にひいきにされていました。

 6月のある日の午後、社会科の時間に、先生は突然、「去年のいまごろ、政府は日米安保条約を改訂しました。安保条約は、日本を戦争に巻き込むものです。先生たちは反対しましたが、政府は数の暴力で押し切りました。許せません。日本には自衛隊という憲法違反の集団があります。自衛隊は人を殺すのが仕事です。大野君のお父さんは自衛隊です。みんな、大野君のお父さんのようにならないようにしましょう」と言ったのです。私の父は当時、陸上自衛官でした。

 私は脳天をハンマーでたたかれたような衝撃を受けました。先生からはひいきにされていたので、なおさらショックでした。

 その日はそれで終わりました。翌日学校に行くと上履きがない。何とか探し出して教室に行き、トイレに行って戻ってくると、ランドセルがひっくり返されていました。筆箱もノートも教科書も散乱です。

 給食は6人で机を寄せ合い、テーブルクロスを掛けていただくのですが、私だけは仲間外れ、自分の分は自分でよそい、教室の隅でひとりで食べました。

 なぜこういう状況になったのかは、明らかです。「人殺しである自衛官のこども」ですから、だれも相手にしてくれないわけですね。

 どの時代にも苛めっ子はいます。そういう者からみれば格好の標的が誕生したわけだよね。

 下校時間になって昇降口に行くと、今度は下履きがありません。探してもムダでした。私ははだしで帰りました。すると数人の同級生が「人殺し」と叫んで、私に石を投げてきました。私ははだしのまま走って帰りました。

 翌日も同じでした。3日、4日と続いて、私は学校に行くのがいやになりました。

 父は毎朝7時前に家を出ます。私は朝食後、「学校には行かない」と言って、押し入れに籠りました。母はびっくり。怒ったりすかしたり、ですが、私は「行かない」の一点張り。母は帰宅した父に、私の不登校を告げました。父は「なぜ学校に行かんのか」と怒鳴りましたが、理由は一切言いません。苛められている者は、絶対そのことを言いません。自分がみじめになるからね。

 母は学校に行き、担任に相談しました。ところが、担任の高橋先生は「どうしたんでしょうね」と言ったそうです。とぼけたのではありません。自分の発言が児童にどういう影響を与えたのかについての自覚がゼロだったのです。

 2、3日して高橋は数人の同級生を連れて我が家に来ました。「大野君どうしたの? 学校に行こう」と言うわけです。同級生はすべてを知っていて、「大野、学校に来いよ」と言いました。「この野郎どもめ」と私は心で思いましたが、しばらくして私は学校に行くようになりました。目にみえる苛めはなくなりました。しかし、陰湿な冷たい空気は残りました。私は早く5年生になってクラス替えが行われることを願いました。

 私は教師、同級生、総じて人間というものへ強い不信感をもつようになりました。学校嫌いになり成績も落ちました。そして5年生になって間もなく、顔面神経麻痺という顔の右半分が動かなくなる病気を発症したのです。痛くはないのだけれど、右目が閉じにくくなり、涙も出ず、笑うと顔が歪むのです。治療に半年、ほぼ毎朝、三鷹病院に通い、マッサージと電気治療を受けました。でも完全に治ることはありません。だから、私の顔はいまも右側が少し歪んだままです。学校での苛めと発症の因果関係は恐らく証明できないでしょう。でもこの病気の原因に強いストレスが挙げられていることは広く知られています。

 これが私の日教組との出会いです。

(月刊 国体文化より転載)