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共産主義革命、共産主義思想、そして工作の数々 共産主義は日本の喉に刺さった大きな骨。 篠原常一郎氏より、読者の方々への言葉を頂きました。 (ジャーナリスト)

2019年末から人類はほぼ100年ぶりといえる世界的なパンデミック(広域流行病)に襲われ、ウイルスが新たな変異株となって害悪をもたらし続けています。 共産主義という一種の思想的・政治的な病も、やはり100年ほど前、コミンテルン(国際共産主義運動)が成立し共産主義政権国家が成立してから幾多の戦火も媒体として地球上に広がりました。   

20世紀末頃に第一の共産主義大国だったソ連邦が崩壊し、これを盟主とする東ヨーロッパ社会主義諸国ブロックが「ドミノ現象」的に倒れる減少を見て、多くの人々が「社会主義・共産主義の実験は失敗に終わった」と述べたものでした。しかし、その後、原則を変更して立て直された一部の共産主義国家はしぶとく21世紀に向けて生き残ったばかりか、彼らが「最大の敵=帝国主義陣営の盟主」と呼んだアメリカの政治・社会の奥底にまで浸透しシンパシーを持った運動を組織して自由主義政治・経済体制を揺さぶるに至っています。  

21世紀に生き残り相手側に浸透(サイレント・インベージョン)して影響を拡大し続けている共産主義国家に、中国と北朝鮮があります。かたや共産党の絶対的な執権政治と市場経済を組み合わせてアメリカに迫る軍事・経済面の実力を涵養し、日々強引な手法で世界への指導権を得ようと努力してアメリカと覇を競い、近隣諸国から領土・領海を奪うことすら辞さない。もう一方では世襲独裁制という時代錯誤的な政治体制を「人間が主人公の政治的・社会的システム」と偽りながら餓死や刑死の恐怖下で人民を縛り付け近隣諸国へも脅威を与える。特徴がそれぞれありつつも共産主義的政治原理で統治された客観的に見て人類に何らプラスをもたらさない残酷な全体主義国家の現実に私たちは直面させられています。  

こうした認識の下に、21世紀にも人類の宿痾であり続ける共産主義の今日的姿を明らかにしようとしたのが、最近相次いで出した『北朝鮮と拉致問題を正しく理解するためのチュチェ思想入門』(育鵬社)、『中国が仕掛ける「シン・共産主義革命」工作』(育鵬社)です。

   共に育鵬社

 

『チュチェ思想入門』は単に北朝鮮の世襲独裁体制を支える指導思想としてのチュチェ思想について解説するだけではなく、それがどのように日本に影響し、拉致問題にもどのように関わっているかなど、具体的な現実に即してその害悪性を解明しています。沖縄の「基地反対運動」や「琉球先住民族論」、北海道の「アイヌ利権」、「チュサッパ(主思派)」と呼ばれる韓国左派の中心に位置する従北派などがどのようにチュチェ思想の伝播によって拡大されたかも明らかにしました。 また、『「シン・共産主義革命」工作』は、習近平体制下で本格化した「偉大な中華民族の復興」路線下での西側浸透工作、2020年米大統領選やBLM運動に見られた共産主義運動の底流からの拡大、日本を含む各国での官民にわたる親中派育成などを概観し、世界制覇をめざす中国共産党の革命戦略を明らかにしています。

おぞましいウイグル、チベット、南モンゴルの「民族浄化」政策も「大中華ナショナリズム」を共産主義と結び付けた現在の中国における世界革命路線と不可分に結びついていることを理解していただけると思います。

 今年は、ヨーロッパのNATOからクイーン・エリザベス空母打撃群が太平洋に派遣され、中国の脅威に対応するリンケージは日米を中心にしたものから更にオーストラリア、インド、フランス、イギリスにまで拡大しました。かつてない経済力に裏付けられた強力な軍事力で周辺国への脅威を増大させ続けている共産主義中国をどう制御し、自由と民主主義の価値観を貫く諸国が勝利していくか? このテーマを考える上で、実際に共産主義者側に立っていたことのある私の2冊の本がいささかでもお役に立てれば、と願っています。