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この1年半、政府はただひたすら目前のコロナ対策に忙殺され、「最悪期の今を乗り切れば」という前提で取り組んできた。

その結果、「今が最悪」という状況は過去から見た状況であり、コロナ禍のクライマックスは3か月経ち、半年経ち、1年経ち、2度目の夏を過ぎようとする今も最終段階にないことが明らかになっている。

ワクチンが完成し、量産体制に入った今冬以降、世界中の人々は「コロナとの戦いは、ワクチンが78億人に普及するまで」だと信じた。感染拡大が始まってからわずか1年弱で人類初のメッセンジャーRNA(mRNA)を利用したワクチンも開発され、旧来の手法を利用したワクチンと合わせて現在、46億人に1回以上投与された。数週間前の想定では、人類に過半数行き渡った今頃はコロナ禍も下火に転じていたはずである。

そこに想定外の変異種、デルタ株が現れた。まるでコンピュータウイルスでいたちごっこを続けるハッカーとクラッカーの戦いのように、人類のワクチン普及に合わせて、ウイルス側が強力な改訂版を作成して対抗し始めたようなタイミングである。

感染者の母数が増えればエラーコピーされる形で誕生する変異株の種類も増える。ペルー発とみられるラムダ株も強力な感染力を持つ疑いが濃厚だが、まだ変異株とは認定されていない。英国で見つかったアルファ株や南アフリカからのベータ株、ブラジルで初検出されたガンマ株など、デルタ株の前にも3種の変異株が確認されていた。