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【ストップ・ザ・左翼政局】 果敢な財政出動を‼ 財務省の財政緊縮路線を打ち破れ  鳥居徹夫(元文部科学大臣秘書官)

東京オリンピックが7月23日開催され、日本選手はメダルラッシュである。

狂ったようにオリンピックの延期や中止を絶叫していた立憲民主党や共産党、そして一部メディアは、政権攻撃の道具とした。

立憲民主党などは、オリンピック開催で菅義偉政権の支持率が浮上することを恐れていたと思えたが、立憲民主党や共産党の期待に反して、菅内閣の支持率は浮上しなかった。

オリンピック開催の直前に、第4回目となる緊急事態宣言が東京都・沖縄県に7月12日に発せられた。

その後も感染者数は、減少するどころか増大する一方で、8月2日から対象地域に神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府が加わり、東京都や沖縄県も期間も8月末まで延長され、蔓延防止措置の対象地域も増加した。

そういう状況の中で、オリンピックが無観客で開催されており、この秋には自民党総裁選があり衆議院議員の任期がくる。

 

◆国民経済は減退、個人消費が激減 

昨年度2020(平成2)年度の国民総支出(GDP)は、マイナス4.7%と「リーマンショック期より悪化」した。とりわけ個人消費が急減した。

鉄道関係や航空産業、旅行業やホテル旅館などの観光業界、さらにデパートなどは軒並みの赤字続きである。

事業者だけでなく個々人の生計も大変である。

コロナ禍の長期化で、多くの自治体で飲食店への時短要請が行われた。外食産業の業界団体は、「休業している間も固定費は発生し続けている。各社とも危機的な状況だ。倒産してからお金が振り込まれても仕方ない」という。

早期に支給しないと「コロナで死ぬのではなく、経済で死ぬ」ことになる。実際に非正規の女性の自殺者が増えている。

「医療崩壊」より先に「飲食業崩壊」の様相である。飲食業に納品している事業者や農業や漁業、畜産の従事者や、そこで働く従業員やパートの女性や、アルバイトの学生への影響も多い。とりわけ非正規雇用や低所得層の方々への波及、そして地方経済の落ち込みも深刻である。

昨年2002年末に改正されたコロナ特措法では、営業時観の短縮など知事の措置命令で罰金が科せられる。営業時間短縮に従わない飲食業店などが対象となっている。ところが生活や事業の支援金は支給が遅いが、罰金取り立ては早いし、追徴金も課せられる。

 

◆国民生活の救済よりも、財政切り詰めなのか 

政府は通常国会閉会の直後の6月18日に、来年度2022年度の経済財政運営の基本方針「骨太の方針」を提起した。ところが新型コロナへの対策は万全を期す必要があるとする一方で、財政健全化の目標は継続し、社会保障費などの歳出改革を実行するべきとしている。

よりによって、新型コロナウイルスへの対応でなど大規模な支出が続く中でも財政再建を進める必要があると強調している。

歳入の面では、「聖域を設けることなく、安定的な歳入財源を確保する必要がある」と提言した。

大手企業や富裕層から、もっと税金を取れということである。これでは国際競争力は低下し、産業企業に体力がなくなり、景気は逆行し、個人消費も伸びない。税収も停滞どころか減少する。

そして数年後には、炭素税(温暖化対策税)の本格導入にカジを切りたいのが財務省である。

昨年度2020年度(令和2年度)の予算総額は、当初予算と1次、2次、3次にわたる補正予算を合わせ175兆6878億円。当初予算(102兆6580億円)の1.7倍という単年度予算額では過去最大の規模となった。

昨年度2020年度の国債の新規発行額は112兆5539億円と、初めて100兆円を超えた。予算全体で国債は歳入の64%。

新規国債発行額はリーマンショック後の2009年の51兆9550億円の2倍を超えると、財務省などは強調する。

自民党の部会では、新型コロナ対策による経済への影響から、積極的な財政出動を求める意見が続出したが、財務省ベッタリのベテラン議員らが反撃した。

日本の場合、国債を増発しても国内で消化する。国債を外国が購入しているわけではないので、ギリシアのように取り付け騒ぎとかパニックにはならない。

財務省は、国債残高が増えると長期金利が上がりインフレになるとメディアに訴えてきた。また国会議員などへのご説明をハシゴしてきた。ところがマイナス金利である。ハイパーインフレどころか、毎年2%の物価目標も達成していない。

この2%の物価上昇が10年間続くと、1.02の10乗で物価は約22%上昇し、名目賃金の上昇にもつながるハズである。

物価上昇率は、税と社会保障の一体改革の2012年以降は、10年間全体でも5%に達していない。消費税以下である。

消費税率が5%から8%、8%から10%と、この間5%もアップした。軽減税率や非課税品目もあるが、消費税アップ分の物価上昇への寄与度は大きい。

消費税率アップは、税金が上がったことであり、物価が上がったのではない。政府公表の消費者物価指数から、税金アップ分を差し引くと消費者物価は横ばいか下がっている。

2014(平成26)年に消費税率が上がったときは、物価水準はそのままだった。デフレ経済下であり、消費税アッブ分の多くが価格に上乗せできなかった。下請け業者は親会社から消費税のアップ分の価格吸収を求められ、賃金は上がらず可処分所得は低下した。

製品価格に転嫁できない分が、労働コストの圧縮に跳ね返り、実質賃金の目減りにつながった。

消費税率がアップしていながら、価格に転嫁できなかった。その結果、勤労者の賃金は抑えられた。そして個人消費も停滞し、景気が停滞しデフレ状態が続く、という悪循環から脱しようというときに新型コロナが世界を襲った。

 

◆「財務省のために働く内閣」となった菅義偉政権、「財政規律」の立憲民主党 

財務省や大蔵族議員、そして一部野党議員は「財政規律」を強調している。

財務官僚は緊縮政策で政治家を洗脳しようと、個々の議員にご説明ご説明とハシゴして回っていた。

今年は消費税の減税とか廃止とか、特別定額給付金(昨年は一律10万円)を求める声もしぼんでいる。

たしかに立憲民主党や国民民主党の政策にも、定額給付金もあるが、財政出動のトーンが沈静化したさせた後に、実現しないことを見越したものである。

通常国会の会期末に、野党は内閣不信任案を提出したが、政府がコロナ下でオリンピックを控えて換算総選挙に打って出ないことを見越した、パーフォーマンスであった。

今年2021年初めにも財政出動の国民世論が盛り上がろうとしていた時に、野党は「国の財政も緊急事態」(立憲民主党の野田佳彦議員)と予算委員会で財政規律を強調し、積極財政の声や財政出動の足を引っ張った。

菅義偉内閣は「財務省のために働く内閣」となった。

財務省は、昨年度2020年度のような定額給付金の一律配布だけは阻止したいとの執念を持っているのではないか。

昨年度2020年度は、国会に提出した補正予算案が修正となった。「生活困窮世帯を対象に30万円給付案」とする当初の補正予算案が、「国民ひとり10万円給付」と個人対象に組み換えた。

米国のバイデン大統領は、コロナ対策とし日本円で200兆円を計上し、すでに議会で法律が成立した。所得制限はあるにしても、そこには1人約15万円の現金給付を実施することも含まれていた。

そもそも現行の事業者や生活困窮者を対象とする対応では、どのように判断するのか、審査の基準は何なのか、不公平が生じないか、などの問題点が指摘されていた。しかも申請者のみが対象である。

これらは、いずれも申請書類が多く審査に時間がかかり、使い勝手が悪すぎる。

他の支援金もそうだが、コマ切れの支援制度が多く、申請するのは自治体の窓口だが積極的に広報しようとしない。

たとえ財政拠出が国であっても、窓口である地方自治体の業務は大変である。

個人への救済制度や、事業者への支援制度を知っているかどうかで、違いが生じる。国や地方自治体の行政情報を多く知っているものと、情報貧者とは大きく差がつく。

生活困窮世帯が増加している時期は、なるべく対象を選別、分断をせず、一律で給付することが望ましい。また審査に時間がかかることもない。

ならば昨年のように、国民一律の定額給付金の支給の方が早い。

今回は選挙直前であり、財務省に狙われるのが怖いという議員心理となった。

立憲民主党なども、財務省に迎合して財政規律を強調している。与野党とも、財務省の財政緊縮路線を攻撃しない。野党と財務省の思考は同じである。

野党は、むしろ財務省の別動隊の役割を果たしている。

いま必要なことは、財務省のインチキ財政危機の主張を押し切り、積極的な財政出動の展開することである。(敬称略)