教科書採択は、毎年度、各地の採択区の教育委員会においておこなわれます。採択替えによって一度採択された教科書は、4年間継続して採択することが原則となっていますが、例外もあります。
例外の一つのケースですが、不合格になった教科書を再申請して翌年度合格した教科書がある場合は、「4年継続採択」の規定にかかわらず、翌年度に合格したその教科書をも対象に含めて採択替えを行うことができます。
令和3年度は、自由社の中学校歴史教科書が翌年度に合格した教科書にあたるため、この制度が適用されることになります。
ところが、文科省は令和3年3月30日付けの「通知」で、採択替えの事務を行うかどうかは採択権者である採択区の教育委員会の判断によるとして、採択替えの事務をしてもしなくてもいい、という方針を打ち出しました。
この結果、同一県内でも、採択区によって、自由社の歴史教科書を調査し、採択の候補とする採択替えの事務を行うところと、採択替えの事務を全く行わないところとに分かれる状況緒となりました。
私たち地方議員の立場からは、こういう事態は、なるべく広い選択肢から教科書を選ぶべきだという観点から見ても、教科書には同じ処遇をすべきであるという公平性の観点からも、望ましくない事態であると考えます。他社の教科書はすべて調査されているのに、自由社「新しい歴史教科書」は調査すらしないことは著しく公平性を欠く差別的処遇になります。
教育は次世代の国民を育てる重要な営みであり、教科書はその中心的な素材となるものです。よりよい教育が行われる前提は、多様な教科書の中から教育基本法や学習指導要領に照らして、最もよいと考えられる教科書が選ばれることです。
以上のような観点から、私たち地方議員の会では、各方面に対して次のような要望を伝え、国民の各層に呼びかけることといたしました。
第一に、文部科学大臣に対しては、翌年度に合格した教科書にも、平等に調査を受け選考の対象となる権利を与えるよう、指導方針を転換することを求めます。
第二に、都道府県の教育委員会に対しては、翌年度合格した教科書の調査をおこなうことが法令で義務づけられているので、それを実施するのは当然として、配下の採択区の教育委員会に対して、調査と採択替えの事務を行うよう指導することを求めます。
第三に、採択区の教育委員会に対しては、多様性と公平性の観点から、翌年度合格した教科書の調査と採択替えの事務を行うことを強く求めます。
第四に、各地の地方議員に対しては、教科書問題に取り組んでいる人々とも協力して、教育委員会に対し、翌年度合格教科書の調査と採択替え事務を行うようはたらきかけることを呼びかけます。
私たち「教科書をよくする地方議員の会」は、地域住民の付託を受け、今後も教科書改善に力を尽くして参ります。