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【論説】欧州ビッグクラブの「クーデター」、猛反対で失敗へ

サッカーボールにスパイクを付けたようなコロナウイルス

 

欧州サッカーのビッグクラブ12チームが4月18日、新リーグ「欧州スーパーリーグ(ESL)」を創設し、8月から始動すると発表した。背景にコロナ禍の観戦試合減少で入場収益や広告収益がなくなり、各チームが財政難に陥っている事情がある。

 

この発表に世界中が大騒ぎとなった。UEFA(欧州サッカー連盟)やFIFA(国際サッカー連盟)だけでなく、ジョンソン英首相などの政財官界から、世界中のサポーターに至るまで、「クラブ経営者がサッカーを私物化する試みだ」として猛反発。UEFAは今季チャンピオンズリーグ(UCL)で4強入りしている3チーム=レアル・マドリード(西)、マンチェスター・シティー(英)、チェルシー(英)=の今季リーグ追放だけでなく、FIFAと共同で出場選手の代表入りを認めない方針まで示唆した。

 

ここまでの逆境を予想していなかったのか、わずか3日間で12クラブのうち英プレミアリーグ所属の6クラブ全てがESLからの脱退を表明。レアル・マドリードのフロレンティーノ・ペレス会長と共にESL構想を主導してきたマンチェスター・ユナイテッドのエド・ウッドワードCEOに至っては、今季限りでの辞任を表明する事態となった。FCバルセロナやアトレティコ・マドリードも脱退の動きを見せ始め、レアルとペレス会長は四面楚歌に立たされようとしている。

 

欧州の各クラブは週末に行われる国内リーグのほか、UEFAが主催する平日開催(ほぼ水曜日)のUCLやヨーロッパリーグ(UEL)を月に1-2試合戦う。UCLやUELは前年の国内リーグで上位チームだけが出場でき、出場枠はUEFAカントリーランキング順にリーグごとに割り当てられている。参加数はUCLが32、UELが48チーム。UELはUCLに出場できなかった下位のクラブによる争いのため、その位置付けは微妙で、出場チームへの報酬も見劣りする。

 

UCLは本選出場給として、約20億円が32の各クラブに均等配分(計約630億円)される。出場給とは別に成績給も各段階で上乗せされていく。グループステージでの1勝は約3億5,000万円(引き分け1億1,600万円)、決勝トーナメント進出は約12億3,000万円、ベスト8、ベスト4と勝ち進むごとに報酬は上乗せされ、決勝進出で約19億3,500万円追加。優勝すれば、さらに約5億2,000万円が上乗せされる。2020-2021シーズンは現在4強に絞られ、上記の3クラブのほか、PSG(パリ・サンジェルマンFC)が勝ち残っている。

 

ESLは、このUCLに代わるリーグとして毎週水曜日に、ビッグクラブ同士の対戦が多くなるドル箱リーグとして収益を上げようと目論んでいる。当然ながら試合数もUCLより多くなる。UEFAは声明で「少数のクラブの私利私欲に基づいたプロジェクト」「ESLに参加するクラブは国内、欧州、世界の大会への出場が禁止され、所属選手は代表チームへの出場機会を失う可能性がある」と発表した。

 

一方、12クラブの台所事情も火の車で、例えばリオネル・メッシ擁するFCバルセロナは1,500億円(10億ポンド)超もの負債を抱え、破産状態に陥っている。高騰する移籍金が資産を食い潰し、他チームへの負債も払えない状態だったところにコロナ禍が到来。クラブ存続さえも危うい状態に陥っている。

 

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