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コロナ禍、財政拠出抑制の財務省と立憲民主党 ‼   鳥居徹夫(元 文部科学大臣秘書官)

◆当初予算の2倍近くになった令和2年度予算 

令和2年度の当初予算、それに1次、2次、3次の補正予算をあわせた、令和2年度全体の政府予算の総額は175兆6878億円当初予算(102兆6580億円)の1.7倍という単年度予算額では過去最大の規模となった。

 つまり国債発行を除く一般歳入が63兆1339億円にまで膨らんだ。うち国債発行は112兆5539億円で一般歳入の2倍近い。

財務省は、コロナ対策で財政出動が重なり、財政規律が緩むとの理由で危機感を強めている。

年明け1月に、菅首相の政務秘書官が代わった。菅義偉事務所の秘書から財務省出身者になった。

事務取扱の秘書官には財務省、経済産業、厚生労働、外務、防衛、警察から6省庁から派遣されている。

政務秘書官は各省庁から派遣される6人の事務取扱を束ねる役割だが、それを財務官僚が担う。つまり首相秘書官は、7人すべてが中央省庁出身となり、財務省派遣は2名を占める。  

そして菅首相は、1月18日に開会された通常国会の所信表明演説で「少子高齢化と人口減少が進み、経済はデフレとなる」「国民に負担をお願いする政策も必要になる。その必要性を国民に説明し、理解してもらわなければならない」と、大見得をきった。

菅政権は、まずは感染防止や生活支援に注力する姿勢を強調するが、それが一段落すると、さらなる国民負担を求めてくるのではないか。

 

◆菅政権に財政規律を求めた立憲民主党議員 

 2月15日の衆議院予算委員会で、立憲民主党の野田佳彦(元首相)は、「国の財政も緊急事態だ」と菅内閣を問い詰めていた。まるで財務省の代弁者だ。

 野田佳彦は「財政健全化の道筋を明らかにせよ」「財政健全化について菅内閣総理大臣から明確なメッセージを」と提起したのである。

 所得課税の負担増や、消費税の軽減税率の縮小や廃止は、真っ先に狙われるのではないか。消費税率の15%とか20%へのアップも視野に入っているのではないか。

財務省は、コロナ対策と経済の両立、すなわち国民の生命と生活を守ることよりも、財政規律を優先する。

いまは感染拡大の防止対策とあわせ、事業者や国民への支援が必要である。

3月の年度末を越せないとか、倒産とか企業解散を余儀なくされることがないように、財政面で強力に手当することが大事だが、財政規律を理由に抵抗するのが財務省である。

昨春の国民一人あたり10万円給付は効果があった。いわば「逆・人頭税」ともいえるものだった。国民の財布を不十分ながらサポートした。

昨春の緊急事態宣言の際は、外出自粛要請や施設の休業を要請し、国民もそれに応えた。

財務省は国民からカネを吸い上げることに虎視眈々としているが、納税者への還元には抵抗する。

 財務省は、国債残高が増えると長期金利が上がりインフレになると、メディアに訴え、国会議員などへのご説明をハシゴしてきた。ところがマイナス金利だ。

 ハイパーインフレどころか、毎年2%の物価目標すらも達成していない。

まだまだ国債を発行できるし、日銀券をジャブジャブ印刷すれば国民生活の救済に当てることができる。

 

◆支給対象を絞り込み、財政支出を抑制しよういう立憲民主党 

  立憲民主、共産、社民3党は3月1日、新型コロナウイルス感染拡大で困窮する低所得者に1人当たり10万円を改めて給付するための法案を衆院に共同提出した。ところが約2700万人が対象で、国民全員が対象ではない

住民税非課税世帯やコロナ禍で大幅に収入が減った方が対象だが、すでに低所得者への追加現金給付は、自民党の前政調会長の岸田文雄も主張していた。

 この野党案は、低所得者世帯中心の限定給付案だが、新型コロナ禍は低所得層だけでなく、就労をしている中間層にも襲いかかっている。住宅ローン返済や教育費支出などカツカツで、残業代が減ると生活苦に陥る世帯もある。

 例えば、ある程度の収入があった夫婦共働き世帯でも、妻が失業、休業するなど、収入減によって家計が苦しくなるとか、従来の消費支出を維持できない世帯もある。

そもそも住民税非課税世帯がイコール生活困窮世帯というわけでもない。

 そもそも支給対象者を、どのように判断するのか。審査の基準は何なのか、不公平が生じないか、役所の窓口が混乱しないかなど問題点が多い。

 とりわけ生活給付や事業支援は、対象者が役所に申請しなくてはならない。その対象の難しさだけでなく、給付決定後に支給対象者へのバッシングも起きないかの懸念もある。また非課税世帯はもともと支援があるとか、なかにはズルしているといった支給対象者への非難もある。

 だからこそ昨春は、「生活困窮世帯を対象にした30万円給付」案が当初の補正予算案を組み換え、国民ひとり一律10万円給付となったのである。世帯単位でなく、個人単位の一律の現金支給となった。

ちなみに自民党の中堅・若手国会議員73名は、今年も10万円の特別定額給付金を再支給すべきだと緊急提言している。

 

 

給付金の国民一律の再支給に抵抗する財務省と立憲民主党 

 財務省は、コロナ感染抑制が一段落すれば、マスコミや野党を使って、声高に財政健全化・増税をアピールさせるのではないか。 

今回も、給付対象を狭く絞り込もうという、財務省や野党、自民党の大蔵族や金融族議員の姿勢である。

 米国ではコロナ対策などで、バイデン大統領は200兆円を拠出する。そこには米国国民一人あたり14万円の給付もあり、すでに議会の下院を通過し成立が確実視されている。

 国民一律の特別給付金の再支給には、財務省は抵抗する。

政権基盤の弱い菅首相を支えているのは、自民党の二階俊博幹事長と財務省である。

先述のように菅政権は、政務秘書官を交代させ財務官僚を起用した。支持率低下で政権基盤が弱まった菅首相は財務省に頼りきりである。

ところが野党の立憲民主党は、国会では財政出動を政府に求めることよりも、学術会議の委員任命問題や総務省接待問題、オリパラ組織委員会など男女の役員比率などを取り上げ、政府を取り上げている。

逆に財務省の別動隊として相変わらずの緊縮思想で、先に述べた野田佳彦のように財政が緊急事態を迎えていると財政規律の必要性を強調したのである。

問題なのは、この質問を立憲民主党が野田佳彦にさせたことである。

要するに、立憲民主党も財務省に迎合し、新型コロナ危機を増税のチャンスとして、財政規律を求める姿勢を優先させている。

 「国の借金が大変だから歳出削減・増税が必要」という視点で、国民の生活は二の次というのが、財務省や立憲民主党等である。

 野田佳彦の質問と同じ2月15日、元財務官僚の国民民主党の岸本周平議員(元民主党)も上記の緊縮思想と共通する発言をしている。「復興増税」のように、今回のコロナ対策を「コロナ税」的なもので行うことを求めるものだった。

岸本氏は「コロナ(対策)のお金をなんとか私たちの世代で払う、その覚悟をみんなで持つべきだ」と述べ、国民の負担増を伴うことを首相に求めた。

いま歳出削減・増税をやれば、経済は悲惨な状態になり、国民を苦しめるだけである。

国民からの要望が強い2回目の特別定額給付金に後ろ向きなのが、立憲民主党と財務省なのである。(敬称略)