shohyo「書評」
映画評「鬼滅の刃」 三浦小太郎(評論家)
今年大ヒットしたアニメーション映画「鬼滅の刃 無限列車篇」は、「新しい革袋に古く熟成した酒を注いだ」というべき作品だった。アニメから久しく遠ざかっていた私が観ても、この映像が最新技術を駆使したとてつもない完成度を持っていることは最初のシーンからわかる。林を柔らかな光が包むような冒頭の風景、正直、私は実写ではないかとすら思ってしまった。そして内容は、もちろん様々な工夫はしてあるけれど、基本、「少年ジャンプ」が最も得意とする王道の少年漫画、主人公が闘いを通じて内面的に成長していくというパターンを忠実に踏襲している。また、「鬼」の造型も、伝統的な悪役パターンと、中世の絵巻物にあるような「土蜘蛛」「妖怪」をベースにしたものと、ホラー映画にしばしば出てくる怪物とがそれぞれ相応しい場面で登場し、観るものを二時間全く飽きさせない快作となっている。
何よりも、原作のストーリーの中でもこの「無限列車」の場面は最も映画向きの設定がされている。前半は鉄道内という閉じられた空間と主人公たちの夢のシーン(これも、無意識の世界とは言え主人公の内面という閉ざされた空間だ)、そして鉄道車両上のバトルという、限定された空間内で物語が進むので、観る者の緊張感が一層凝縮される。特に鉄道車両上のアクションシーンは、これはアニメでしかできない表現だろう(原作ファンには申し訳ないが、迫力と躍動感においてはやはり映像のほうが上である)。
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