shohyo「書評」
【書評】 「いちえふ(福島原発第一全三巻 竜田一人著 講談社 三浦小太郎
本作は2012年と2014年、福島原子力発電所で作業員として働いた漫画家が、その体験を見事に漫画として描き揚げた傑作。2014年から15年にかけて全三巻の単行本が発行されている。一応、この作品はこれで完結となっているが、お世辞抜きで、本作は東日本大震災後の原子力発電所で作業員たちがどのように働いていたかを伝える歴史的なドキュメントとなっている。
もちろん作者は特別な技術を持っているわけではなく、一人の補助作業員として地道な日々の業務を果たしていた。この漫画ではその日常は淡々と語られ、ドラマ性やフィクションはほとんど込めていない。これは本作で作者自身が語っているのだが、当初は、むしろドラマ性を強め、漫画ならではの面白さを追求する発想もあったようだ。しかし結局その方針は放棄される。「それはデマであおっている連中と同じ発想だな」と作者は考えたのだ。そして、本作は作業員たちの日常をリアルに伝える傑作となった。
まず驚かされるのは、内部の写真撮影などできたはずもないのに、発電所内部の様子や機械、作業手順などが徹底してリアルに描かれていること。これは漫画家ならではの記憶力と、目の前の事態をまず画像として捕える視点があったこそだろう。(結構笑ってしまったのは、ただの錆止めを機械に塗る時でも「ムラがあるなあ」と思ってしまうところ。これは漫画家そのものの発想である)
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