中曽根康弘氏が亡くなった。心からご冥福を祈ります。戦後の政治家の中で、いわゆる「宰相」としての風格というか貫禄のあった人は、それほど多くはなかったが、中曽根氏はその一人であったと思う。勿論政治姿勢などで批判すべきところは多々あった。しかし、中曽根氏が「戦後政治の総決算」ということを宣明し、自主憲法制定に総理在任中から亡くなるまで努力し続けたことは高く評価したい。
政治家と官僚をうまくコントロールするために、後藤田正晴を官房長官に起用したのは大きな間違いであった。後藤田は、警察官僚として中曽根氏より先輩であった。そして、後藤田は憲法問題・国防安保問題という肝心要の事で中曽根氏の足を引っ張り続けた。奥野誠亮先生は後藤田より一年先輩だが、改憲論者であり、後藤田とは政治姿勢が全く違っていた。
中曽根氏には『政治文化情報』をずっと送らせていただいていたが、お礼と激励の手紙を頂いたことも良き思い出である。そういうことがあったから言うわけではないが、中曽根氏は戦後の総理のなかでは、吉田茂・岸信介両氏と並んで歴史に残る宰相の一人であろう。安倍総理にも是非とも正統憲法回復を実現して歴史にのこる宰相となってもらいたい。
戦後日本を建て替へて自主独立を求めんとせし政治家は去りぬ
憲法を正しくすべしと主張しつつ晩年を元気で生き来し政治家は去る
国家民族の根幹のことを主張せし政治家はあはれこの世を去りぬ
手放しでほめるにあらねどこの頃の政治家に比すればほめるほかなし