contribution寄稿・コラム

「火垂るの墓」は反戦アニメではない 三浦小太郎(評論家)

 この8月にしばしば語られたり、また上映されるアニメーションに、野坂昭如原作の「火垂るの墓」があったと覚えている。スタジオ・ジブリの1988年度作品で、「となりのトトロ」と共に上映されてた。監督の高畑勲の政策が遅れに遅れ、当初の上演時は一部セル画に色が塗られていなかったことでも有名(?)な作品だが、これを一部の論者が言うような「反戦アニメ」「戦争の残酷さ、犠牲になった幼い兄弟の悲劇」という視点でのみとらえるのは惜しい名作である。いや、そのような視点をこそ、原作者の野坂が明白に否定しているのだ。野坂と高畑勲の1987年、まさに制作中に行われた対談から、たいへん印象的な言葉を引用する。

映画では、両親を失い(海軍として父親は戦場に出ており、母親は空襲で死ぬ)、引き取られた親戚の家でも邪魔者にされた「清太」(14歳)と「節子」(4歳)の兄妹が、戦争中の防空壕に住み着き、ままごとのような、しかし、兄が切なく妹を護ろうとする生活が描かれる。これは野坂昭如の原作も全く同様だ。しかし、野坂自身は、他のエッセイでも露悪的なまでに自分が妹に残酷だったことを語っているが、ここでも、高畑監督相手に明言している。

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