contribution寄稿・コラム
東日本大震災における自衛隊の行動を讃えよ 西村眞悟
三月十日は、八年前に東日本大震災が発災した日だった。それ故、マスコミは、三月十日当日はもちろん、その前後にも被災者と被災地が、如何にして悲しみを乗り越えて復興に向かって努力してきたのかという観点から多くの特集番組を放映していた。
しかし、その報道姿勢には一つの重要な欠落があるように感じた。その欠落とは、自衛隊が如何に出動し如何に活動したのかということに関する点検と、将来に備えて自衛隊の運用を如何に改革するかという問題意識である。
次は、平成七年一月十七日の阪神淡路大震災と同二十三年三月十日の東日本大震災における生存者救出数である。
阪神淡路大震災では、警察が三千四百九十五人、消防が一千三百八十七人そして自衛隊が百六十五人をそれぞれ救出した。
東日本大震災では、警察が三千七百四十九人、消防が四千六百十四人そして自衛隊が一万九千二百八十六人をそれぞれ救出した。
ここで明らかなことは、阪神淡路大震災の際は、全生存者救出数五千四十七人のうち自衛隊が救出した人は三パーセントであるのに対し、東日本大震災の際の全生存者救出数二万七千六百四十九人のうち自衛隊が七十パーセントを救出して、圧倒的な役割を果たしたということである。死亡者発見数においても自衛隊が圧倒的な役割を果たしたことはいうまでもない。ここにおいて、明らかなことは、自衛隊の運用が巨大災害に際して国民の生死を分けるということだ。
しかし、このような圧倒的な役割を果たしうる自衛隊であるにも関わらず、何故、阪神淡路大震災において、自衛隊は救出数三パーセントの役割しか果たせなかったのか。その決定的な原因は、自衛隊の初動が遅れたことだ。では、何故、自衛隊の初動が遅れたのか。
その原因は総理大臣が左翼で無能で無責任だったからだ。この総理大臣は、自衛隊は違憲だとして長年生きてきた男で、自分が自衛隊の最高指揮官だということを知らなかった。それに加えて不運が重なった。兵庫県知事が所在不明だった。ここに自衛隊の初動が遅れ、生きて救助されたであろう人々がむなしく亡くなっていった原因がある。ここにおいて、重要な教訓が明らかになる。それは、無能な総理大臣をもてば、多くの国民の命が失われるということだ。その上で、東日本大震災を点検するが、この時、自衛隊は全生存救出者の七割を救出した。従って、時の総理大臣は、阪神淡路の時より有能だったのであろうか。それが、そうではないのだ。阪神淡路の時と同じような左翼で無能で無責任な男だったのだ。
しかし、自衛隊は迅速に出動した。この理由は何か?ここに、危機管理における最重要な教訓がある。自衛隊の指揮官が独断専行したからである。これがポイントだ。平成七年一月十七日、伊丹から燃える神戸の煙を眺めながら出動できなかった中部方面総監は、後の退任の記者会見で、その無念が甦り、男泣きに泣いた。そして、自衛隊には、この無念が歴代指揮官と隊員に伝わっていた。
斯くして平成二十三年三月十日午後二時四十六分、宮城県男鹿半島の東南東沖百三十キロの海底を震源地とするマグニチュード9の大地震が発生し、揺れる東京でそれを察知した陸上自衛隊の火箱芳文幕僚長は、直ちに「これは戦だ」と直感し「陸上自衛隊の総力を挙げて必ずこの戦に勝つ」との決意を固めた。そして、次の命令を発した。「いずれ大臣、統合幕僚長から正式命令が来るが、それを待つことなく直ちに準備せよ」。つまり、地震発災後直ちに、火箱陸幕長は自衛隊出動のスイッチを押したのだ。自衛隊出動が必要な事態であることは万人に明らかだった。そして、自衛隊は発足以来最大規模の陸海空十万七千人出動体制を敷き、派遣期間二百九十一日、延べ千六十六万人という史上最大の災害派遣を実施したのだ。このオペレーションに左翼内閣の介入する余地はない。いや、介入がなかったから迅速に十万七千人出動が実施されたのだ。従って、この時、自衛隊は、軍隊として運用(オペレーション)されていたことになる。それ故、全生存者救出の七十パーセントを自衛隊が救出することができたのだ。ここに重要な教訓がある。それは、つまり、自衛隊が出動するか否かは、政治が決定するとして、出動が決まった後のオペレーションの領域に政治は介入してはならないということだ。
その上で、実際に行われたオペレーションを点検し、自衛隊に必要な装備の点検や自衛隊の能力(戦力)向上のために何が必要かを議論し確認しなければならない。
私は、何故、気仙沼の孤立した大島や、他の孤立箇所に、自衛隊の精鋭である第一空挺団を降下させなかったのか。また、孤立した大島に最初に上陸したのは強襲揚陸艦をもつアメリカ海兵隊で、自衛隊でなかったのは何故か。海上自衛隊にも空母型の大型護衛艦があり、これを使えば、もっと早く大島を孤立から救えたのではないかと思っている。
以上、この度のマスコミ報道や国会の議論から欠落している重要な点を指摘した次第だ。