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【論説】卒業生は大歓迎?首都大学東京が東京都立大学に
首都大学東京の名前が2020年4月から東京都立大学になる。
同大は、東京都が設置する3大学(東京都立大学、東京都立科学技術大学、東京都立保健科学大学)と1短大(東京都立短期大学)が2005年に統合されてできた。
大学名は、当時の都知事だった石原慎太郎氏(85)の意向が強く働いたとみられる。芥川賞の選考委員も務めていた石原氏だけあって、ネーミングには殊更執着した。都営大江戸線も、応募多数だった『東京環状線』となる予定が、彼の物言いで大江戸線に差し替わったと言われる。武蔵野まで伸びる沿線全体を大江戸と呼べるか否かはともかく、東京環状線よりは風情のある名称となった。
命名が成功する例もあれば失敗する例もあるだろう。ただ、首都大学東京に関しては良い悪い以前に、「大学」の後に「東京」と付くことで、大学なのか別組織なのかも判然としない分かりにくさがあった。
4つの大学が合併しての名前だから、いきなり都立大にしては、合併した他大学の職員や在学生、卒業生が納得できなかっただろう。メガバンクの合併名でも見られた例だ。元々は三菱銀行と東京銀行、UFJ銀行と独立していた3行が最近まで三菱東京UFJ銀行(現:三菱UFJ銀行)と足し合わせただけの行名で、利用者の利便性を置き去りにしてきた。「吸収でなく合併だ」ということを示すには、全く新たな名前にするか、全てを並べるしかない。
大学名の場合、公立か私立かが名前で判別できないと、学費や学風がピンとこない。『首都大学』では、都立なのか私立なのか分かりにくい。私(記者)が高校生だった1990年頃、東京都立大は横浜国立大や横浜市立大などと同様に、既存の国立大や私立大とは一線を画した独特の実力と人気を備えた大学として、受験生の間では知名度の高い一流大学だった。
最寄り駅が東急東横線の『都立大学駅』で、大学城下町を形成している点でも、個性を発揮していた。首都大学東京は残念ながら八王子で開学し、都心部への私大移転が進む流れに逆行したこともあり、都立大よりも存在感は年々薄らいでいた。
キャンパスは移転できないが、名前だけでも今回、『都立大』となることで、SNS上では学生や卒業生からの歓迎コメントが多い。大学の統合によって、リベラルアーツ系の学部を設置するなど学内の大改革も行われたようだが、学生には大学名と共に混乱をもたらしただけだったようで、不満が大きかったようだ。少子化で今後、大学は生存競争が益々激しくなる。都立といえども人気がなければ存続が厳しくなる時代はすぐそこまで来ている。
大学名の変更で心機一転、『東京都立大学』物語の主人公となる学生・卒業生らの奮起に期待したい。