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【論説】問題だらけ?野田氏と仮想通貨業者
9月の総裁選に現職閣僚ながら出馬の意向を表明していた野田聖子総務相(57)が窮地に立たされている。事務所に金融庁を呼びつけて無登録の仮想通貨業者を同席させた上で、説明要求をしていた問題が広がりをみせる勢いだからだ。
仮想通貨業者が規制の仕組みなど行政上のルールを知りたければ、当局に直接問い合わせれば済む話だ。ところが、野田氏の夫とつながりのある業者が今年1月30日に同席し、事務所を通じて説明を求めた。この業者は資金決済法違反の疑いで1月12日に通告を受けていた業者である。その後、2月には金融庁から行政指導を受けている。
加えて、当問題に絡む取材をしていた朝日新聞が金融庁に情報公開請求したところ、野田氏自ら「朝日新聞が調べている」と一部の記者に話したことで、事前に請求者情報が総務省側に伝わっていたことも発覚。金融庁が情報を共有したのは、開示の是非について意見を聞くのではなく、報道される可能性を伝えたため、制度の趣旨に沿わない不必要な漏えいが行われていたことになる。2016年9月には、総務省自ら請求者の個人情報を不必要に共有しないよう各自治体に通知していたにもかかわらず、自身がルール逸脱の一方の当事者になっていた形だ。
これに関しては、菅義偉官房長官が7月25日の記者会見で「極めて不適切。金融庁で対応をする」と述べ、関与した職員らを処分する方針を明らかにした。
問題の仮想通貨はスピンドル(通称GACKTコイン)と呼ばれ、野田氏の夫や、芸能人が関係するいわくつきのものであることも、週刊誌やワイドショーが飛び付く格好のネタとなっている。仮想通貨という流行のトピックというだけでなく、総裁選前という微妙な時期の発覚、情報公開制度を所管する総務省トップという立場、夫の前歴や旗振り役の芸能人、朝日新聞、秘書の役割などなど、話題に事欠かない問題に発展しそうだ。
総裁選前ということで、安倍首相にとっては扱いに困るだろう。野田氏を切ろうにも庇おうにも陰謀説や逆陰謀説につながりそうで(すでにそういった説が出回っている)、稲田朋美前防衛相に続く女性閣僚の人選失敗と批判されることは間違いなさそうだ。