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【論説】議員の見返りがない口利きは違法?

 
文部科学省局長が収賄容疑で逮捕された問題は、昨年1月の天下り斡旋(あっせん)問題に続く不祥事として文科省に対する風当たりが強まっている。便宜見返りを図る手法としては通常、官僚に直接依頼するよりも、国会議員や地方議員に口利きを依頼するケースが多い。口利きの対価に金銭や裏口入学を依頼すれば、当然に贈収賄罪に問われるが、見返りのない口利きは違法なのだろうか。
 
国会議員会館には日々、様々な請願や陳情、要望がある。住民のこうした依頼を叶えようと議員活動しても、それを通常「口利き」「あっせん」とは呼ばない。
デジタル大辞泉によると、
口利きは「間に立って紹介や世話をすること」、
斡旋とは「間に入って双方をうまく取り持つこと」。
 
口利きも斡旋も当事者同士の間を取り持つ行為を指すようだ。ほぼ同じ意味と考えて良さそうだが、刑法197条の『斡旋収賄罪』でも斡旋利得処罰法の『斡旋利得罪』でも法律用語としては「斡旋」という表記になっている。マスコミや我々の会話では「口利き」の方が使いやすく意味も分かりやすいので、前者が形式用語として、後者が日常用語として役割分担しているような形だ。
 
一方、請願や陳情、要望は国民や住民が自分たちの思いを政治に反映させる有効な手段だが、その違いはどうなっているのだろうか。
請願は「こいねがうこと。目上の人などに願い出ること」、
陳情は「政治家などに、実情を訴えて、善処してくれるよう要請すること」、
要望は「物事の実現を強く求めること」とあります。
請願や要望ではなく、抗議となればデモ行進や抗議集会なども有権者の政治活動の1つと言える。
 
議員の元にはしばしば国民や住民から請願書が提出される。拉致被害者の救出や特定の疾病に対する医療費補助など国民総意に近い要望は有志が署名を集めて、賛同する議員の紹介により議会に提出される。国会の場合、衆参各院で受理されると、議長から付託を受けた所管の委員会で審査し、議長に報告。議長は本会議に諮り、採択または不採択が決定される。
 
かつては、有権者が議員の元に交通違反のもみ消しを依頼し、秘書が管轄の警察署に電話して手心を加えてもらうなどという話をよく聞いた。これは選挙での投票を期待しての口利きとなるので、斡旋収賄罪か斡旋利得罪に問われる可能性が高く、今ではどこの事務所も受け付けてはいないだろう。議員であれ官僚であれ公僕たる者は、常に後ろめたい行為を避ける「李下に冠を正さず」の精神で私欲を戒め公共の福祉に供することが求められる。