cc「中朝国境の旅」
連載第21回 料理の思い出 野牧雅子(宮塚コリア研究所研究員)
連載第21回 料理の思い出
野牧雅子(宮塚コリア研究所研究員)
私は料理があまり好きではない。料理より好きなことがたくさんあり、料理をする時間がもったいないと感じる。料理が好きで得意な人たちは、食べることが好きであるらしい。美味しいものを食べたい、という気持ちから、料理に関心がわくという。
夫や子供に美味しい手料理を食べさせたいという、尊い気持ちから料理がうまい女性たちも、大方はまず自分自身、美味しいものを食べたい人たちである。私が料理下手な言い訳を述べたのだが、夫の宮塚利雄と中朝国境に赴いていた頃、かの地に行くと普段わかない感情がいつもわいた。「何か美味しいものを食べたいな」という気持ちである。
中朝国境のレストランで食べたものはすべてがまずいわけではないが、やはり日本の方が豊富な種類の食べ物があり、盛り付けも器も美しい。店内は清潔で、店員さんも親切だし気分が良い。それぞれの土地にその地では評判の美味しいお菓子や料理がある。日本にいるともっと美味しいものはないかなと思ったことがないから、日本には美味しいものが、少なくとも私にとって美味しいものがたくさんあるのだと思う。日本は快適に暮らせるとつくづく思う。通りすがりの人に道を聞いてもみな親切。あごであしらう人はいない。
しかし、中国の田舎のごく一般的なレストランでの第一の苦痛は料理ではない。多くの店で清潔さに対しての配慮が少ないことである。通されたテーブルに前の客の食べた後の皿やコップや箸があったり、肉を食べたあとの骨がテーブルや床に散らばっていたり、酒や汁でテーブルが濡れているのは当たり前のことである。
テーブルにA四判ほどの大きさの紙が貼ってあり、その上にびっしりとハエがあったところもあった。
食べ物を扱う店なのにトイレがすごく汚いところもあった。レストランであるのに、トイレに手洗いがないところもあった。
朝のバイキングが見事で、その土地の共産党の幹部が食べにくるような立派なホテルもあったが、おかゆと饅頭だけというホテルもあった。
そのおかゆはすごく大きいどんぶりに入っていて、従業員の女の子がドンと乱暴にテーブルに置いたため、中身がポチャっと飛び、テーブルと私の服にかかってしまったこともあった。その女の子は仏頂面でその場を去った。
饅頭には肉が入っているものと入っていないものがあった。
なお、レストランの従業員は鴨緑江側より、豆満江側の方が総じて感じが良かったような気がする。
豆満江側のレストランでは、従業員と親しく話をしたりすることもできた。特に朝鮮族の人たちや平壌食堂で働く北朝鮮の女の子は、豆満江側の方がずっと感じが良かった。街の風情も私はどちらかというと、豆満江側の延辺の方が、鴨緑江側より好きである。
今回は、私の写真に写っている食べ物を紹介しよう。
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