pet「マリの喫茶室」

マリの喫茶室(6) 老後破綻

マリの喫茶室(6) 老後破綻
 

【老後破綻】
 
 高齢化が進み、長生きするようになると、心配なのは蓄えである。
しかも、頼みの綱の年金はあと数年で65歳からの支給になる。長い老後に備えるためには、①貯金をする、②働き続ける、③支出を減らす、この3つを全部実践しなければならない。
しかし、現実にはなかなか難しい。
老後破綻をする人は、現役時代と同じように暮らし、身の丈にあった支出に減らせない人、ぜいたくがやめられない人、と思われがちだが、実はそうでもないらしい。
減らしたくても減らせない支出、例えば、親の介護、病気、ニートや失業中の子ども、など自分の支出以外の必要経費がかさんで、少しづつ貯金を取り崩し、最後に老後破綻してしまうというパターンも結構多いらしい。
その上、家のローンまで残っていたら、住む家すら失いかねない。
 
【ペット医療費が原因で破綻】
 
 そうしたある意味、やむを得ない事情の人に加え、私はペットの医療費や介護による老後破綻予備軍がいるのではないかと思っている。
ペット保険はあるものの、毎月の保険料がかかるし、高齢や既往症があると入れなかったり、支払い限度額があるので万能ではない。
また、ペットも高齢化で介護が必要になってきているが、自分が年をとってくると、犬猫の介護は結構大変である。手間もお金もかかる。最近増えている老犬・老猫ホームも、年100万円以上かかるという。
 
 私の知人は、とにかくペット好きで、常に犬や猫を多頭飼いしている。
ペットの方が寿命が短いので、だんだん病気が増える。人間と同じ生活習慣病にもなるし、癌にもなる。しかも保険がないので、医療費が人間以上に高かったりする。
 
 最近、彼女の13歳の大型犬のコロちゃんが死んでしまった。
癌だったのだが、とにかく、その治療費がすさまじかった。○十万の手術はもちろん、一回5万円くらいの免疫療法だの、抗がん剤などの高額医療を続けた。
しかし、やはりリンパに転移してしまった。そこで今度は、放射線治療をすることにした。ところが、放射線治療をする前の全身麻酔で、そのまま目覚めることなくコロちゃんは突然、死んでしまったのだ。
麻酔の投与量を間違えたのか、コロちゃんの体力が低下し麻酔に耐えられなかったのか、それは分からない。しかし、本来の病気ではなく、実にあっけなく死んでしまった。
「病院には治療に行ったのに。朝はあんなに、元気だったのに、突然死んでしまった。最後のお別れもいえなかった。」
彼女はとても嘆き悲しんだ。
「不要な治療をして、かえってコロに苦しみを与えてしまった。」
しかし、このセリフを聞くのは実は3度目である。
その前の猫のクロの時も、その前の犬のキャンディの時も、同じことを言っていた。なぜ繰り返してしまうのか。
「もう年なんだし、延命治療はやめたら。犬だし、寿命なんだから。本人も苦しいし、医療費だってかさむよ。老後に少しは備えたら。」
と何度も言ったのが・・・。
そのたびに、彼女は、
「犬じゃなくて家族。できることをやらなければ、一生後悔する。1日でも長く生きてほしい。」
と言っていた。
そして、
「もうこの子が死んだら、ペットは飼わない。」
とも言っていた。
 
 私にも、家族であり、相棒であるウサギのマリがいるので、ペットを思う気持ちは分かる。
でも、延命治療を繰り返し、しかも、累積すればマンション一つ買えるくらいのお金をペットの治療費にかけるなんて、どうなんだろう。
 
 そして、最愛の家族であるコロを失った彼女は、ペットロスになった。
その喪失感に耐えられず、やはり、また、次の犬を飼うことにした。
ミディアム・プードルの子犬である。もうすぐ彼女のもとにくる。
 
 彼女は、失う悲しみを繰り返すとしても、老後破綻することになっても、犬を飼うことはやめられないだろう。ペットは麻薬と同じ。
そして、病気になったら、手元にお金がある限り犬の治療費に使うのだ。最愛の家族だから。
 

 
<ミディアム・プードルの子犬>