tajikarao「タジカラオの独り言」

「同期の桜」の思い出2 野伏翔

「同期の桜」の思い出2
野伏翔
 

 特攻隊の生き残りである海軍飛行予備学生第十四期会の鴫原芳樹氏を軍規指導係に招いての芝居作りは、他の作品の稽古では味わえない特殊な体験となった。まず鴫原氏の名前の呼び方であるが、氏は今後自分のことを「甲板士官」と呼べという。だがこの「甲板士官」という呼称はどうも呼びにくい。「甲板士官!」と呼びかけるのはどうも呼び捨てにしているようで気が引けるのだが、この呼称鴫原氏にとっては立派な尊称のようであった。
 「甲板士官殿」や「甲板士官先生」はどうでしょうかと提案した者がいたが、即座に却下された。ある年配の俳優が「鴫原さん」と、さん付けで呼んだことがあるが、「俺は貴様の友達ではない。海軍の軍規を習う以上は甲板士官と呼べ!」と一括された。大事な戦友たちの姿を後世に正確に伝えるためには、微塵の妥協もしないという姿勢にはいつも圧倒された。尤も演出の私は教育の対象外であったので、敬意をこめて鴫原先生とお呼びしていた。
 
 軍規指導の第一は何といっても「敬礼」の仕方である。

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