pet「マリの喫茶室」
ウサギシリーズ(15) マリ再び歯を削る
ウサギシリーズ(15) マリ再び歯を削る
「ティモシーがなければ、ニンジンを食べればいいじゃないの」
などと言いそうな、マリ―・アントワネット並みに気位の高いマリだが、ネックはいつも歯の伸びすぎである。
1年ぶりに、またマリの具合が悪くなった。
先日、家に帰ると、マリがお腹をよじりながら横たわっている。サークルの扉をあけると、一目散にカーテンの方に走っていき、隠れてしまった。
のぞくと、カーテンの中で、じっと横たわっている。
具体が悪いときは、よく隠れる。
象も死ぬときは誰にも見られない場所にいくという。具合が悪い時、身を隠すというのは、動物の本能かもしれない。
餌をあげても食べない。好きなサプリも食べず、大麦若葉は匂いをかいだだけで、すぐに横たわってしまった。
1年前の状況と同じだと思った。
きっと歯が伸びて食べれなくなったに違いない。しかし、翌日の午前中は仕事が休めない。
ウサギ先生のところに行くのは午後になってしまう。
それでは遅いかも?
迷ったが、マリの命には代えられないので、いつもの高い動物の救急病院にタクシーで向かった。
病院の待合室で犬猫とともに30分ほど待った。
獣医さんは、
「食滞(食べれなくなること)ですね。腸の動きが悪いです。点滴と注射をし、一晩入院しましょう。」と言った。
そして、マリは、犬の鳴き声がうるさい病棟(?)へ消えていった。
家に帰るともう夜中の12時。
疲れていたし、空のケージを見ると、喪失感が胸に迫った。マリがいない家は本当に火が消えたようだ。
マリは、今頃、注射をしたり痛い思いをし、犬猫に囲まれながらひとりぼっちでケージの中にいて、どんなに心細いだろう、早く迎えにいってあげなくては、と思った。
翌朝、電話をすると、マリは食べられるくらいに回復したそうだ。
少し安心した。午後、3時にマリを迎えに行き、その足で地下鉄と電車を乗り継いで、ウサギ先生のところに向かった。
途中、ホームで、酔っ払いにからまれた。
酔っ払いは、マリが入っているキャリーバックを見て、
「なんだ、猫か」
と言った。
「いえ、ウサギです」と言おうかと思ったが、酔っ払いに説明することもないので、黙っていた。
1時間ほどかけて病院にたどり着いた。
マリは、やはり歯が伸びていた。そのせいで食事ができなかったのだ。
ウサギ先生は、ひょいとマリをもちあげてひっくりかえし、開口器で口を開け、麻酔なしではさみで歯を切った。
その間、マリは目を真っ赤にし、キャーキャーと喉が絞り出すような声で叫んだ。本来、鳴かないウサギがなくのだから、本当に怖くて痛いのだと思ったが、マリのためである。
治療が終わり、ついでにお尻も爪もきれいにしてもらい、再びマリと私は電車で家に帰った。
家に帰ると、マリは急いで走って自分の家(サークルの中)に向かった。この24時間で、マリは大変な思いをしたのだろうと思う。私もくたくただった。
でも、マリが家にいる、それだけで嬉しかった。マリがいるだけでリビングは暖かい。
マリを抱っこして、鼻に自分の鼻を押し付けた。丸い背中や耳の後ろをなぜまわした。マリの温もりが嬉しい。
その後、マリは4日くらいで本調子になった。
またまた、予定外のとんだ出費にはなったが、マリが元気になればそれでいいと空の財布をひっくり返した。
(怪獣マリゴン対ゴジラ)