tajikarao「タジカラオの独り言」
―時間はない― 野伏翔(映画監督)
11月は辛い。拉致被害者の象徴的存在である横田めぐみさんが13歳の中学生当時、新潟の海岸から拉致されたのが1977年の11月15日だったからだ。今年で丸46年、また一年が空しく過ぎてしまったという思いは、ご家族だけではなく救出運動に係るすべての国民の思いである。だが取り返せない。取り返す動きさえ見えてこない。人は今の政府が怠慢だからだと言うが、それを言うなら歴代政府全ての責任と言えよう。そして拉致の事実を否定してきた旧社会党などの左翼勢力と、事実を黙殺し続けてきたマスコミ、半島に対して間違った贖罪意識を持つ教育界、触らぬ神に祟りなしと無視を決め込む多くの一般人。つまり戦後日本社会全体にその責任はある。
1977年9月、めぐみさん拉致のわずか二か月前、石川県能都町宇出津海岸で日本人久米宏さんを拉致した、北朝鮮工作員李純一が石川県警に逮捕された。「宇出津事件」と言う。この手柄で石川県警警備部公安課は警察官として最高の名誉である「警察庁長官賞」を受賞している。県警が乱数表と変え字表を押収し、暗号解読に成功したからだ。警察と検察は「国外移送拐取罪」と言う刑法で立件しようとした。だが何と、久米さんの出国時の意志を確認できないという理由で起訴はされなかった。李は外国人登録法違反さえ不処分のまま釈放された。スパイ防止法のない我が国の現状は今もこの時と全く変わっていない。そしてこの事件の二か月後に横田めぐみさんは拉致された。新潟県警始まって以来の大捜索活動だったと言う。警察は知っていたのだ。それから20年後、工作員の証言を雑誌「現代コリア」に取り上げた大阪朝日放送のプロデューサー石高健司氏等の活躍によって、横田めぐみさん拉致の事実が明らかになった。それまではご両親も世間も、めぐみさんの失踪が北朝鮮による拉致である事実を知ることは全くなかったのだ。
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