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北朝鮮、権威と名誉をかけた軍事偵察衛星発射が失敗 宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄
北朝鮮は全国的に「モネギチョントゥ(田植え戦闘)」真っ最中である。年初から全国的に展開された良質の肥料の素になる、北朝鮮自慢の「主体肥料」の出番である。全国的に生産された良質の肥料こと「人糞弾」が効能を発揮する時が来たのである。中学の時、歴史の時間だったかで先生が、「農耕民族である日本では戦国大名たちはどんなことがあっても田植えの時と収穫の時は互いに戦争をするようなことはなかった。収穫が終わってからまた戦を再開し勝利してその時に領土や食糧を確保するんだ」というようなことを教えられたことがある。もっとも、これはあくまでも日本の話のようで、同じ農耕民族の朝鮮半島では1950年6月25日にいわゆる朝鮮戦争が勃発している。
国民総動員させて田植え戦闘を繰り広げている北朝鮮が5月31日に、日米韓が自制を求めていた軍事偵察衛星の打ち上げを強行し失敗した。北朝鮮は今回の発射に先立ち「米国と追随勢力の危険な軍事行動をリアルタイムで追跡、監視、判別し、軍事的準備態勢を強化するために(偵察衛星は)必要不可欠だ」などと主張したが、今回の発射実験は21年1月に発表された国防5ヵ年計画の五大重点目標の一つで、金正恩総書記は今年4月に開発機関を視察した際、「絶対に放棄も変更もできない必要不可欠な先決課題」だと述べ、打ち上げの最終準備を急ぐように指示していた。
朝鮮中央通信は打ち上げから約2時間半後に「軍事偵察衛星発射時に事故発生」というタイトルで事故原因にまで踏み込んだ報道を行った。今回の発射では1段目のエンジン分離後、2段目のエンジン点火に異常が生じ、飛翔体が推進力を失った都のこと。韓国の情報機関、国家情報院は31日、1段目分離後に「無理な経路変更」を図り、技術的な問題が生じたとの見方を国会情報委員会で報告し、衛星開発を担う北朝鮮の国家宇宙開発局も31日に、新型エンジンの信頼性、燃料の安定性に「重大な欠陥」があると認め、次の打ち上げまでに「様々な部分実験をおこなう」とした。
北朝鮮は5月31日に発射失敗を認めた際、「できるだけ早い期間内」に2回目の打ち上げを行うとしており、朝鮮労働党副部長の金与正は「遠からず宇宙軌道に正確に進入し、任務の遂行に着手するだろう」と談話を発表した。北朝鮮は今回の発射実験を6月11日午前0時までの期限内に行うと事前通告しているが、2回目の発射実験をこの日までに行うことは一般論では原因追及に時間がかかるので、ごく近い将来の発射は考えにくいという意見もある。北朝鮮の言う「早い時期」とは6月11日までの期限内という意味ではなく、「早くしろ」というレトリックとして投げられた言葉であると理解すべきか。軍事偵察衛星の打ち上げは金正恩の権威と名誉をかけたイベントでもある。今回の失敗でも幹部や科学技術者たちの処罰は行わないだろう。金正恩は最高指導者に就任して間もない2012年4月
に「衛星」を打ち上げ空中爆発した際も早々失敗を認めた。北朝鮮は今回「軍事偵察衛星」を搭載したロケットを打ち上げたがロケットと弾道ミサイルのミサイルは技術的に同じで、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁決議はロケットも念頭に北朝鮮に対して「弾道ミサイル技術を使った全ての発射」を禁じている。北朝鮮は軍事偵察衛星の発射に失敗したが、近いうちに再発射する方針を打ち出しているが、2日にシンガポールで開催したアジア安全保障会議に出席したバイデン政権の高官は、日本経済新聞の取材で「外貨収入の約50%はサイバー攻撃で盗んだものと懸念している」と話したという「日本経済新聞」2023年6月3日号)。北朝鮮の核・ミサイルの開発資金源が海外ら奪取した暗号資産にあることは周知の事実で、北朝鮮の核・ミサイル開発を物理的に阻止するためには、北朝鮮の暗号資産へのサイバー攻撃対策を早急に打ち立てなくてはならないところにきている。