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「我が国は、 ロシア、北朝鮮、中共の核弾道ミサイルを抑止する為に 核弾頭ミサイルの実戦配備を断乎実践すべし」 西村眞悟
ウクライナ戦争が、極寒の年末年始に入ってゆく。
しかし、ウクライナ開戦の前に、アメリカの政府系軍事研究組織が、ロシア軍がウクライナ侵攻を開始すれば、「ウクライナの首都キエフは二・三日で陥落する」との見通しを公表し、我が国のマスコミもその見解を流していた。
また、アメリカのバイデン大統領は、開戦二週間前に、在ウクライナのアメリカ軍事顧問団をウクライナから撤退させ、民間のアメリカ人にウクライナからの退去を要請し、退去しないアメリカ人が戦禍のなかに取り残されても、アメリカ軍は、アメリカの青年を危険な戦場に送って残留者を救出しない、とまで発言していた。
今の時点で、このウクライナ開戦前のアメリカからの発信を振り返れば、これは、アメリカのバイデン政権によるロシアのプーチン大統領を戦争へ踏み切らせる挑発ではなかったのかとも思える。
とはいえ、ユーラシアの最も東に位置する我が国周辺においても、西のウクライナ戦争と連動するかのように、北からロシア、北朝鮮そして中共の、露骨な軍事演習とミサイル発射が相次いでいる。
よって、我が国に於いても国家防衛体制の強化が俄に議論され始め、自民・公明の与党間議論を経て国防費増額問題が年末に浮上している。しかし、与党間議論においても国会においても、我が国防衛に最重要の課題であるにも拘わらず、タブーの如く口にチャックをして議論を回避して年を越そうとしている論点があるので、次にそれを述べる。
その我が国政治が、回避している最重要な論点は、
「敵の核を我が核を以て抑止する」という一点である。
しかし、この一点を議論せずして、
「敵基地攻撃は是か非か」とか「発射された敵ミサイルの迎撃体制構築」、
さらに意味不明の「専守防衛」を貫き「先制攻撃」をしない、
とかを専門家の如き顔をして長々と議論していた。
そこで、次に、我が国が(福田赳夫内閣)、見て見ぬ振りをして通り過ぎていた、一九七七年(昭和五十二年)十月の西ドイツのヘルムート・シュミット首相の、ソビエト(現ロシア)の欧州の全ての主要都市に届く中距離核弾頭ミサイルSS20を如何にして抑止するかの決断を示しておきたい。
この年の十月、日本では日本赤軍による日航機ダッカハイジャック事件が起こり、西ドイツでは西ドイツ赤軍によるルフトハンザ機ハイジャック事件が起こった。
福田首相は、ハイジャック犯人の要求を全て飲んで人質は全員救出された。
シュミット首相は、軍の特殊部隊GSG9のコマンド部隊をルフトハンザ機内に突入させて犯人を射殺し(一人逮捕)、人質全員を救出した。
そのうえで、シュミット首相は、同じ十月の二十八日にロンドンの国際戦略研究所において記念講演を行い、
- 政治的・軍事的バランスの回復が我々の安全保障にとって死活的に重要である。
- そのバランスの回復は、東西のデタントに前進をもたらす為にも必要である。
との歴史的演説を行った。
この演説に従って、NATOは二年後に「二重の決断」をする。
則ち、「アメリカからモスクワやレニングラードなどのソビエトの主要都市に届く高い命中率を誇る中距離核弾頭ミサイルパーシングⅡを導入したうえで、ソビエトとの核軍縮交渉を開始すること」をNATOは決断し、パーシングⅡの実戦配備とともにソビエトとのINF交渉を開始した。
このINF交渉は、西ドイツにパーシングⅡの配備が開始された時に、一時中断するが、ゴルバチョフがソビエトの書記長になってから再開され、一九八七年、レーガン大統領とゴルバチョフ書記長は、米ソのINF条約に署名し、SS20とパーシングⅡは撤去された。
しかし、この米ソのINF条約に拘束されない中共は、せっせと中距離核弾頭ミサイルの開発と実戦配備を続け、あまりにも不均衡になったのでトランプ大統領とプーチン大統領は、ともに一昨年、INF条約を廃棄した。
以上が、現実に行われた核抑止と核軍縮の歴史的事例である。
しかし、我が日本は、ヘルムート・シュミット西ドイツ首相の一九七七年十月のロンドンにおける歴史的演説から始まったこの歴史的事例に目を瞑ったかの如く無関心であった。
しかし、ソビエトのSS20は、日本の主要都市に向けても実戦配備されていたのである。かつて、ロシアのエリティン大統領が、来日したとき、空港で「日本に対する核を撤去して来日した」と挨拶したらしい。しかし、日本の総理を含む高官は、エリティンが何を言っているのか、理解できなかったという。
よって、言っておく。
現在の我が国防衛の最大の課題は、ロシア、北朝鮮そして中共の核弾頭ミサイルの抑止である。
従って、我が国の防衛議論のなかで、
「我が国は、ロシア、北朝鮮そして中共の主要都市に届く核弾頭ミサイルを保有する」
という問題提起だけでもするべきである。
自民、公明の与党よ、この問題提起だけでも「抑止力」になることが分からんのか。