yuoku「憂国の直言」

【憂国の直言】日本政府は慰安婦問題に正面から反論せよ  ―真実を訴える韓国の愛国者の努力を無駄にするなー    松木國俊(朝鮮近現代史研究所)

去る11月16日、「慰安婦問題の解決を目指す日韓連携のあり方」というテーマのシンポジウムが東京都内で開催され、韓国より韓国国史教科書研究所所長の金柄憲氏及びジャーナリストの朴舜鐘氏が参加した。

金柄憲氏は慰安婦問題における韓国側の主張があまりにも事実を歪曲していることに義憤を覚え、2019年12月に同志と共に在韓国日本大使館前で、元慰安婦をめぐるさまざまな「嘘」を暴露する記者会見を行った。

 以来、正義連(旧挺身隊問題対策協議会)が日本大使館正面で開く「慰安婦を称える水曜デモ」に対抗して、同じ場所で「反慰安婦デモ」を毎週実行し、元慰安婦やその支持団体の主張が虚偽であることを一次資料に基づいて訴え続けている。当初は金柄憲氏の「一人デモ」から始まり、現在では賛同者も増え9団体が「反慰安婦デモ」に参加するまでになった。

金柄憲氏は同様の活動を韓国全土で繰り広げており、今年6月末から7月初めにかけて、仲間と一緒にドイツのベルリンまで飛んだ。そこで彼は区内に慰安婦像設置を許可したミッテ区議会に抗議し、慰安婦像の前で「碑に書かれている『日本軍による強制連行』は全くデタラメだ!」とベルリン市民に訴えている。

今回のシンポジウムで金柄憲氏は「慰安婦問題は全て虚構であり、このような『嘘』がまかりとおる韓国に未来はない」と憂国の情を語り、「慰安婦問題を解決する方法はただ一つ。それは真実を全ての人々に知ってもらうことだ」と断言した。シンポジウムのもう一人のメンバーである朴舜鐘氏の発言も同様の主旨であった。

それはまさに正論であり、慰安婦問題は小手先の対応で解決できるものではない。これまで河野談話をはじめとして日本側が安易に謝罪を繰り返し、基金などを作って「お詫び」をしたために、「日本の官憲が朝鮮の女性を強制連行して性奴隷にしたことを日本政府も内心認めている」と韓国側は理解しており、「なぜ日本は国家として正式に謝罪し法的責任を取らないのか」と益々憤慨して、世界中で日本の悪口を言いふらしているのが現状である。

国連でも韓国の主張を疑わずにそのまま取り上げて来た。自由権規約委員会などいくつもの人権条約に基づく委員会が「国家として公式に謝罪し、元慰安婦に補償して責任者を処罰せよ」さらに「日本軍が多くの女性を拉致して性奴隷にした事実を教科書に書いて子供たちに語り継げ」というとんでもない勧告を日本政府に突き付けている。

このままでは日本人の名誉は取り返しのつかないほど傷つき、日韓の溝は深まるばかりである。両国の経済や安保問題にも悪影響を及ぼすことは必定であり、ロシアや中国のような覇権国家や北朝鮮という無法国家の軍事的脅威下にある日韓が互いに反目を続ければ、共倒れとなる公算すらある。

 金柄憲氏や朴舜鐘氏も、韓国を愛するがゆえに日韓関係が破局に至ることを危惧し、身の危険すら省みず、慰安婦問題の真実を世界に訴えているのだ。

 一方、これまで日本政府は韓国の一方的攻勢の前で「謝罪も補償も終わっている」という逃げの姿勢に終始して来た。国連の勧告に対しても同様である。これでは「強制連行はやったが、その謝罪も補償も済んでいる」という言い訳にしか聞こえない。

このような日本政府の逃げ腰の態度は、「強制連行はなかった」と命がけで真実を訴えている金柄憲氏たちの立場を日本が全否定するものであり、彼らを「背後から撃つ」に等しい。それはようやく芽生えつつある日韓相互理解への望みを根こそぎ絶ち切ることを意味し、アジアの自由陣営の自滅に繋がる恐れすらある。

岸田首相に申し上げる。慰安婦問題をめぐって韓国側に一切妥協すべきではない。余計な配慮が逆効果をもたらすことはこれまでの経過から明らかである。日本政府は金柄憲氏に代表される韓国の真の愛国者と手を携え、国連などあらゆる外交の場において「日本の官憲による強制連行は一切なかった」ときっちり史実に踏み込んだ反論を展開しなければならない。韓国の歴史歪曲を正面から論破してこそ、韓国人の胸に刺さった「恨みのトゲ」を根本から抜き去ることが可能であり、日本と韓国が結束して中露北朝鮮の脅威を退け、共に繁栄へ向かう道が開ける。そして何よりも大切な日本人の名誉と誇りを守ることになるのだ。

 

以上