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 空にはミサイル連射、田畑には糞尿弾、地中には核爆弾投下の北朝鮮   宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄

 北朝鮮がこの2~3ヶ月で空に打ち上げた各種のミサイル弾は優に百発を越えるが、下種な言い方をすれば”エライ気前よく打ち上げますな。北朝鮮は貧乏国かと思っていたがそうではないようだ。ミサイル・核開発の資金は潤沢のようだが、資金源は何なんだ”と言われそうだ。この11月9日の午後にも北朝鮮西部の粛河付近から日本海に向け、短距離弾道ミサイル1発を発射した。北朝鮮によるミサイル発射は今月2~5日、米韓の合同航空訓練への対抗措置として計30発以上を発射して以来で、日本列島の近海は北朝鮮のミサイル発射実験場となってしまった。

 北朝鮮からミサイルが発射されるたびに、軍事に堪能した評論家などがそれらしき理由を述べているが、結論から言えば、弱体化した朝鮮人民軍が世界の軍事大国に立ち向かうには、もはやミサイルと言う”飛び道具“しかなく、米本土まで到達可能で核弾頭を搭載できるミサイル、即ち「核ミサイル」開発成功のために日本海付近を発射実験場としているのである。金正恩は9月8日に行われた最高人民会議での施政演説で、それまで「自衛的措置」と主張して正当化してきた核開発を、「先に核を放棄したり非核化するようなことは絶対あり得ず」「核武力はすなわち祖国と人民の運命であり、永遠なる尊厳である」と明言した。北朝鮮のミサイル能力は発射実験を繰り返すことで着実に向上しており、これまで「使えない兵器」だった核が「使う兵器」となった昨今、小型の核爆弾を搭載したミサイルの完成のために、前例のない頻度でミサイル発射実験が繰り返されることになる。

 韓国の大手紙「朝鮮日報」の日本語版は11月3日「北朝鮮、ミサイル発射に1日で100億円使った」との記事を公開した。また、米政府系のラジオ自由アジアによると、11月2日に北朝鮮が撃ったミサイル総費用は、新型コロナウイルス流行前の北朝鮮が1年間に中国から輸入したコメの総額に匹敵すると伝えた。北朝鮮が年初から国民総動員でかき集めた「糞尿弾」は、今年も威勢よく各協同農場の田畑に投下(散布)されたが、秋の収穫は不作で、来春に向けて地方で多数の餓死者が出る恐れがあると伝えられている。この結果、農民への米の割り当て分はほぼないことを知った協同農場の幹部らは、農民が米を盗むのを黙認している有様だという。本来ならこの季節は各地の協同農場では1年の生産と豊作を祝う「決算分配」の行事が大々的にマスコミに報じられるのだが、それもこの30年来、絶えて久しい。北朝鮮は今年の5月以降、弾道ミサイルの発射を国民にほとんど発表しなくなった。ミサイル発射の成果を宣伝しても、食うものも食わずに核・ミサイルばかりに熱を上げていると、国民からの反発と怒りが爆発するのが関の山だから。私はかつて、北朝鮮はスローガン大国で年中次から次ぎへと食料増産の新たなスローガンやポスターが作り出されるが、これで北朝鮮の国民の「食べる問題」が解決されることはなく、スローガンよりも「トウモロコシ米一杯だけでも支給しろ」と人民の怨念の声が聞こえてくる、と書いたことがあるが、脱北者から「宮塚さん、あんたの言う通りだよ。スローガンでお腹が一杯になることなんかないよ」と言ってくれた。

 人民を飢餓の状況に晒しながらも、先の『朝鮮日報』の報道ではないが「ミサイル発射に1日だけで100億円つかった」と言うことになると、北朝鮮は核・ミサイル開発の資金をどこから捻出しているのか。一時、マスコミや専門家は北朝鮮の豊富な地下資源を取り上げて、その価値が100兆円にも及ぶなどと吹聴したことがあったが、これはあくまでも地下に眠っている資源で、これを採掘して輸出するまでには随分と時間と手間ヒマがかかる。北朝鮮は核・ミサイル開発の資金源としているのは、「打ち出の小筒」ならぬ「サイバー攻撃による暗号資産(仮想通貨)の窃取」である(この項を次号で詳しく述べる)