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「君たちは恥ずかしくないのか」 西村眞悟
九月十七日は、平成十四年(二〇〇二年)九月十七日、小泉純一郎総理が北朝鮮の平壌に行き、北朝鮮の独裁者である金正日国防委員長と日朝平壌宣言で合意した日から二十年を経た日である。
そこで、東京に於いて、小泉訪朝二十年の日に、北朝鮮に拉致された日本人救出の為の集会を開き、その後にデモをするので参加してくれとの要請を受け、上京した。
そして、集会の冒頭に挨拶を求められたので次の通り話した。以下、要旨。
(1)二十年前の小泉訪朝の目的は、拉致被害者救出ではなく「日朝国交樹立」である。
よって、日朝平壌宣言の紙面の半分以上は、我が国が北朝鮮に巨額の金を支払い、我が国が北朝鮮への請求権を放棄する約束に費やされている。
仮に、この約束が実行されれば、我が国は核を持つ独裁テロ国家に対する世界最大の「テロ支援国家」に転落する。
(2)そのために、日朝国交樹立の最大の障害である日本人拉致問題については、
小泉側と北朝鮮との共同謀議によって五名生存、八名死亡で決着をつけたこととなった。
(3)仮に、国民と拉致被害者家族が思い込んだように、小泉訪朝の目的が、拉致被害者救出ならば、
①訪朝前日の九月十六日に官邸に総理との面会を求めて訪れた拉致被害者家族との面談を、
総理が「澄んだ心で北朝鮮に行きたい」という理由で断るはずがない。
②八名の死亡を小泉訪朝団が簡単に信じるはずがない。
橫田めぐみさんのお母さんである早紀江さんが、咄嗟に言ったように、
「何処で、何時、どうして死んだ」ということも分からないようなことを、信じることは出来ません、と判断するのが当然であろう。
③小泉訪朝団が日本への帰国に際し、北朝鮮からトラック二台分の松茸をもらって帰るはずがない。
(4)この小泉訪朝団の内実・実態を、官房副長官として知り尽くした安倍晋三さんがいなくなったので、外務省の人間や秘書が、安心してTVでしゃべり出したようだが、誤魔化されてはならない。
その後、デモが始まり、中央区常磐公園から日比谷公園まで歩いた。
デモのシュプレヒコールのメインは、「日朝平壌宣言を廃棄せよ!」である。
そして、日比谷公園に着くと、そこで「国葬反対」の集会が行われていた。
これを観て、日本民族は、ここまで堕ちているのかと思った。
すると、昭和二十年四月十二日の、鈴木貫太郎内閣総理大臣と、ドイツのヒトラー総統と、アメリカに亡命していたドイツ人作家トーマス・マンのラジオで発表された談話を思い起こした。
四月十二日、アメリカ大統領F・ルーズベルトは死去した。その報に接し、江戸時代生まれの最後の総理大臣鈴木貫太郎は、三月十日のアメリカ軍による東京大空襲で無辜の市民十万人が焼き殺された焼け跡も生々しく、未だ焦げる匂いが漂う東京にいて、
その無念の感情を押し殺し、高貴な威厳を保って、同盟通信社の短波放送により、
総理大臣としてアメリカ国民に対して次の哀悼の談話を発信した。
今日、アメリカが我が国に対して、優勢なる戦いを展開しているのは、
亡き大統領の優れた指導があったからです。
私は、深い哀悼の意をアメリカ国民の悲しみに送るものであります。
しかし、ルーズベルト氏の死によって、
アメリカの日本に対する戦争継続の努力が変わるとは考えておりません。
我々もまた、あなた方アメリカ国民の覇権主義に対し、今まで以上に強く戦います。
他方、ドイツのヒトラー総統は、F・ルーズベルト大統領の死に対し、鈴木首相とは全く違って、
口汚く罵しる談話を発表していた。
アメリカに亡命していて、この鈴木総理大臣の談話と、ヒトラー総統の談話を聞いた
ドイツ人作家トーマス・マンは、放送で次のように、ドイツに呼びかけた。
ドイツ国民の皆さん、東洋の国日本には、なお騎士道精神があり、
人間の死への深い敬意と品位が確固として存在する。
鈴木首相の高らかな精神に比べ、あなたたちドイツ人は恥ずかしくないのですか。
日比谷公園で、「国葬反対」を叫んでいた諸君に言いたい。
貴方たちには、人間の死への深い敬意と品位が存在しない。
貴方たちは、恥ずかしくはないのか。