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「無効な憲法は廃棄せよ 我が国は不文の憲法の国である」 西村眞悟

連日、ウクライナ・ロシア戦争の、無慈悲で過酷な戦闘の状況が伝えられるなかで、我が国の国会では憲法改正の議論が続いており、漏れ聞くところでは、「憲法九条に自衛隊を書き加える」という改正案でまとまりつつあるらしい。

これこそ、開いた口が塞がらない。我が故郷の言葉ではっきり言う。「お前ら、アホか!」。

ロシアのプーチン大統領が、現在、ウクライナに侵攻しているのは、ウクライナが核兵器を持たない軽武装国家になったからではないか。

 ソビエト解体後のウクライナは、世界第三位の核保有国であり空母も保有する強力な軍隊を保持していた。しかし、一九九四年十二月五日に、ウクライナは、核を放棄してロシアに引渡し、軽武装国になるかわりに、アメリカ、イギリス、ロシアがウクライナの安全を保障するというブダペスト覚書に署名した。従って、ロシアのプーチン大統領は、かつての二〇一四年のクリミア半島侵攻併呑に続いて、この度の本年二月二十四日に始まるウクライナへの北と南と東からの全面侵攻ができたのだ。

 そのロシアは、西でウクライナに接しているが、東端では我が国に接しており、しかも七十七年前の八月、日ソ中立条約を破って我が国の領土である南樺太と千島に侵攻し、未だに我が領土を不法占拠しているではないか。

 このようなロシアと接している我が国が、ロシアがウクライナに侵攻しているこのような時に、「憲法九条に自衛隊を書き加える」とは何事か。そもそも「憲法九条」を読んだことが無いのか。その第一項は「戦争の放棄」、次の第二項には、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」そして「国の交戦権は、これを認めない」と書いてある。ここに、自衛隊を書き加えれば、自衛隊は「国の交戦権を行使できない」と明確に宣言することになるではないか。

従って、陸海空自衛隊は、現在、毎日行っている訓練と演習、例えば富士総合火力演習のような軍事演習は一切できないことになる。何故なら、これらの自衛隊の訓練と演習は、「国の交戦権」を行使する為に行っているからだ。これ、我が国が、強盗群の前で丸裸になるという「無防備国家宣言」に、他ならない。ブダペスト覚書によるウクライナの軽武装国家化以上の強盗を誘惑する愚行である。もちろん、ヨダレを流して喜ぶのは、我が国の西方にある北からロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩労働党総書記そして中共の習近平主席である。

以上の立論に対して、憲法九条二項の冒頭に書かれている「前項の目的を達するため」という文言を用いた判りにくい反論があるのは承知している。しかし、憲法は、義務教育で教わる児童生徒も含む全国民に明確に判るものでなければならず、国際的にも明瞭でなければならないのだ。であるのに、この九条のような解釈の定まらない文言は、「憲法の文言」に相応しくない。もともと、この憲法九条は、我が国を占領しているアメリカが、日本を二度と再び脅威にならない弱小国に止め置くために書いたのだから、廃棄はできても、改正のしようがない代物ではないか。

以上の通りであるから、現在の国会の諸君のように、「日本国憲法」の「改正」にしがみついていると、訳が分からんことになり、確実に国益を損じる事態を自ら招くことになることだけは確かである。そもそも、「日本国憲法」を書いた者(アメリカ人)が、「改正できないような改正規定」を書いたのであるから、「改悪」ではなく「改正」ができると思うこと自体が間違っている。

この上で、次ぎに、諸兄姉に、祖国の誇りある活力ある存続の為に、是非とも得心して戴きたいことを書く。それは、昭和二十二年五月三日に施行された「日本国憲法」という文書は、我が国の憲法としては無効であるということだ。

そもそも、安倍晋三氏が政権に復帰して初めて迎えた平成二十五年四月二十八日、安倍内閣は政府主催の「主権回復を祝う会」を、天皇皇后両陛下の御臨席を仰いで憲政記念館で挙行したではないか。

この「主権回復を祝う会」は即ち、我が国の主権が回復することを祝うのであるから、論理必然的に、我が国は、昭和二十年九月二日の降伏文書調印からサンフランシスコ講和条約が発効する昭和二十七年四月二十八日の前日まで、主権が無かったことを前提としている。

なお、サンフランシスコ講和条約は次の通り合意され調印された。第一条(a)日本国と各連合国との戦争状態は本条約が第二十三条の定めるところのより効力を発する時に終了する。(b)連合国は日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する。そして、本条約は、昭和二十七年四月二十八日に発効したのだ。

そこで、「日本国憲法」が、公布され施行されたのは何時か。それは、昭和二十一年十一月三日公布、同二十二年五月三日施行である。よって、この我が国に主権が無い時に公布され施行された「日本国憲法」は明らかに無効なのだ。

では、「日本国憲法」が無効ならば、我が国の眞の「憲法」とは何か。

それは、我が国の歴史と伝統の中に明らかに「不文の憲法」として現存している。

同じく「不文の憲法」の国であるイギリスは、一〇六六年のウイリアム一世のノルマン王朝の創設から始まるので、その「不文の憲法」の法源の中核は、一二一五年のマグナ・カルタである。

このイギリスに対して、我が日本の肇國はさらに千年以上も古いので、我が国の「不文の憲法」の法源は、小森義峯教授の「日英両国における不文憲法の重要性」という論考によれば次の通りである。

①古事記・日本書紀に記された神勅や詔勅、

②十七条憲法、

③明治維新以降昭和二十一年元旦までの重要な詔勅(例えば五箇条の御誓文、教育勅語、年頭國運振興の詔書)、

④大日本帝国憲法と旧皇室典範及びその下で成立した國體法的諸法令、

⑤現行の国会法・内閣法・裁判所法その他実質憲法的重要性を有する諸法令

さらに私は、北条泰時が制定した関東御成敗式目を我が国の「不文の憲法」の法源としたい。

世界の諸国の中で、我が国ほど、その歴史と伝統の中に、高貴で貴重な「不文の憲法」の法源を豊かに蔵している国はない。