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林芙美子記念館 放浪の集大成、愛の棲家
自伝小説といわれた『放浪記』、男女のうつろい易い愛を描いた『浮雲』が代表作とされる林芙美子だが、実は大東亜戦争の中、従軍記者としても活躍をしていたのは、意外に知られていない。
『浮雲』は陸軍報道班員としてシンガポール・ジャワ・ボルネオにも滞在した時代が色濃く反映されている小説である。1937年の南京攻略戦は毎日新聞の特派員として派遣され、吉屋信子とともに女性の特派員として活躍していたのである。
芙美子と共に活躍した吉屋信子は少女小説というジャンルを確立した作家であり、終生同性女性との愛を貫いた人である。
林芙美子もまた、登場時は「貧乏を売り物にする」「半年のパリ生活を売る成り上がり」「軍国主義のお抱え」、などといわれた作家だが、後々その一生が舞台化され「放浪記」として大人気を博している。
二人の作家の共通点は、自分に正直であり、世間の思惑に惑わされず、臆せず前進したことであり、勿体を付けることのない気力の人であったと思う。
その林芙美子が、生涯の知識と思いを込めた終の棲家が新宿区に記念館として公開されている。
多かれ少なかれ人が自邸を建てるときには、それなりの強い想いがある。
『放浪記』『浮雲』で世に躍り出た林芙美子は、夫である画家との愛の巣をつくったのだが、
家造りにかける想いは半端なものではなかった。
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