minsha 「とおる雑言」

【とおる雑言】 ミャンマーの今後の焦点は     寺井 融(アジア母子福祉協会監事)

ミャンマーで国軍によるクーデターが発生した。

もっとも軍側は憲法第四一七条及び第四一八条による「国家緊急事態宣言」を発しただけ、と強弁するかもしれない。

国軍は「二〇二〇年選挙で不正が行われた」と選挙結果を否定。トランプ支持者は国会に乱入したが、ミャンマーは軍がアウンサンスーチー国家顧問ほかNLD(国民民主連盟)政権幹部を拘束した。

そうなるかもしれないと「予測」していたのは、アジア・ジャーナリストの松田健氏である。当方は「それも有りだけれど可能性は低い」と分析していた。国防や治安は軍、それ以外はNLDといった権力分掌は、それなりに機能していると、甘く考えていたのである。不明を愧(は)じる。

今後の焦点は①「緊急事態宣言」は本当に一年間で解除されるか②解除後、六カ月以内に選挙は実施されるか③NLDはそれに参加できるのか④できるとして、参加するか(二〇一〇年総選挙にはスーチー女史の意向で参加していない)⑤速やかに民政移管がなされるかといったところであろう。

先のティンセン(旧軍人)政権は政治犯の釈放、報道の自由化、二重為替の廃止、少数民族武装組織との停戦と成果を上げてきた。それに比べ、二〇一五年以降のNLD政権は実績に欠け、スーチー独裁との声も上がる。それなのに選挙で圧勝だ。いまだに反軍感情(あるいはスーチー人気)が高いのかと、訝ったものだ。

タイパターンでもよいから、民主主義の漸進をのぞむ。

 

【付記】 ヤンゴン市内の複数の友人からの報告によれば、現在までのところ市民生活は平穏であるとのこと。コロナで職を失った人たちが暴徒化でもしないかぎり、一九八八年の教訓もあるので治安は保たれていくものと思われる。ただ、海外からの投資熱が冷え、経済発展が遅れるのを危惧する。それにしても、タイにおけるクーデター、タクシン首相(二〇〇六年)やその妹のインラック首相(二〇一四年)らの失脚時に比較して扱いが大きいのではないか。タイは豊かであり、刺激したくない。貧しいミャンマーに対してなら、いくら叩いても損はない。そう考えているのなら間違いだ。カンボジアやラオスと同様、いっそう中国を頼るようになるのを危ぶむ。 寺井記