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【論説】詭弁を用いて嘘を真実にしてきたメディアが馬脚を露す

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「大は小を兼ねる」という諺は、詭弁にも最大限活用できる。
 
先日、ある雑誌の記事で(仮想通貨ビットコインで「11億円稼いだ男」)という記事があった。2017年1月から2月にかけて、ビットコインを5000万円買ったという男性が、同年12月には23倍に相場が跳ね上がった結果、時価11億円の『億り人』になったという。ところがその後、仮想通貨市場の暴落が始まり、7月10日時点で3億5000万円の含み益になっているという内容だ。
 
この記事、見出しに戻って「11億円稼いだ」という表現は真実と言えるだろうか。金融市場において、含み益はあくまで含み益であり、利益確定して初めて稼いだという言葉を使用できるはずだ。ただ、この手の考え方は、数兆円の資産を持つIT企業の創業者も同様で、持ち株を時価で計算したものであるから、男性が当時11億円を稼いでいたと強弁されれば、偽りとは言えないのかもしれない。
 
だが、過去の時間軸の中で最も時価が高かった瞬間を「稼いだ」と言われれば、投資家の多くは稼いでいるはずで、利益確定ができずに最後は損切りという定番コースがあるからこそ投資は難しいのである。
 
ちなみに、仮想通貨市場はその後も低迷しており、この『億り人』は買い増しを続けているそうなので、時価はその後も下がり続けているはずである。「11億円稼いだ」過去はどんどん乖離しているのが現実と言える。
 
また、北海道地震を見事にメルマガで予測していたと週刊ポストに絶賛されている東大名誉教授が「次の危険地帯は…」などと、いつものように、予測の全能性をアピールしている。
 
メルマガではたしかに、北海道胆振地方で3か月以内に震度4以上の地震が発生するリスクを6段階評価でレベル4として配信していたらしい。しかし、数多ある注意報のうちの一つであり、複数の広いエリアと、3か月以内という長い期間、更には震度4以上という震度の幅を考えれば、誰だって的中できるレベルと言える。
 
「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」である。こんな形の予測が、地震の備えに役立つとは思えない。仮想通貨の例が時間軸における「大は小を兼ねる」なら、こちらは場所における「大は小を兼ねる」である。
 
事程左様に、嘘と真実は報じ方によって同居できてしまう。針小棒大という熟語があるが、言葉は縮尺を替えれば当たり前の話が壮大な真実に化けてしまう特徴がある。「世界には2種類の人間しかいない。日本人か、その他の人間だけだ」と言った類の詭弁である。嘘ではないが、詭弁に近い。「日本人」を「自分」に置き替えても、「アジア人」に置き替えても通じてしまうのだから、
 
ネットやスマホが普及する以前、左翼系メディアはこうした論法を巧みに駆使して世論をうまく操作してきた。その卑劣なやり口が、メタタグの操作などの形となって昨今、白日の下に晒されている。我々はある意味、嘘まみれの真実を、金を払って購入し自ら洗脳されているとも言える。「嘘ではない嘘」を見抜くには、言葉のニュアンスに詭弁が紛れ込んでいないか、1人1人が眉に唾を付けて判断するしかない。